日常生活で「紙とペン・鉛筆」を使わなくなって久しいが、この影響を思わぬところで痛感したことがある。PBT試験(いわゆるペーパー試験)で行われる技術英検をはじめて受験した時、解答をうまく書くことができなかった。頭の中には解答があるのだが、それを適切に書き起こすことができなかった。それどころか、文字をうまく書くことすらできなかった。解答を書き直すことも非常に神経を使う作業だった。何度も解答を書き直すものの、結局たいして変わらない内容の解答になる、自分の意図に反する不本意な内容の解答になる、ということばかりだった。結果として、解答作成に時間がかかりすぎ、時間配分が大幅に乱れた。もちろん、結果は不合格だった。
テキスト講読を通じて、デジタル機器によるデータ測定が情報をそぎ落とすこと、デジタル機器が日常生活の現実を正確にとらえるとは限らないこと、これらを詳細に検討した。もちろん言うまでもないが、このことと同時に、デジタル機器によってより高精細なデータ測定・分析ができるようになっていることも理解する必要がある。
授業担当者の青山は中・高・大と陸上競技に打ち込んでいた。陸上競技はデジタル化・機械化・精緻化が進んでいて、青山が実体験している数十年前の陸上競技とは違う競技であるかと思うくらいだ。例えば、小・中・高の地区大会でも、電動計時方式によって0.01秒単位(100分の1秒単位)で記録が測定されることが一般的になった。もちろん、日本選手権やオリンピックなどの規模の大会になれば、より高性能な機器でより精密な記録測定が行われる。とても興味深いことに、0.01秒単位での測定では順位が決まらず、0.001秒単位(1000分の1秒単位)の「写真判定」に持ち込まれることがある。デジタル技術の発達により、陸上競技はどんどん進化している。
第109回日本陸上競技選手権大会の女子100mハードル決勝(2025年7月6日)は、4レーン田中佑美と7レーン中島ひとみが12秒86の同タイムでフィニッシュしたが、写真判定の結果、田中が12秒852、中島が12秒855と判定され、0.003秒差で田中の優勝が決定した。写真判定が今ほど精密ではなかったかつてなら、かつてなら「同タイム両者優勝」という結果になったのではないか。正式リザルトにあるように、1000分の1秒単位の計測は、記録の公認についてはまったく意味はなく、両者の記録は12秒86である。ただし、日本選手権優勝は同年9月開催の世界選手権東京大会の代表選考の要件のひとつだったから、1000分の1秒単位の計測は順位の決定については重要な意味があった(ただし、別の要件を満たせなかった田中の代表内定はならなかった)。
青山は上記のシステム障害の影響を受けなかった(と思われる)。特に、20日の夕方から夜にかけては学内で日常業務に従事していたために、学外の情報システムやウェブサービスを利用することがなかった。障害の程度や被害の様子は休憩時間中に見たニュースを通じて知るだけだった。
ニュースのひとつに非常に興味深いものがあった。AWSのシステム障害のために、プロレス団体スターダムが20日夜開催の特別興行のPPVを中止せざるを得なくなったが、社長の判断によって、興行をすべてYouTubeで生中継・無料配信することを決定した、という内容だった(Yahoo!ニュース、同日19時2分配信記事)。PPV告知ページによれば、チケット代金は4620円である。購入者数が2000人だとすると、返金総額は900万円を超え、スターダムは大きな損失を被る。それにもかかわらずPPV中止・興行無料配信をごく短時間で決断した社長の「損して得取れ」の大英断は、プロレスファン、スターダムファンから大きな支持を受けるはずだ。
「フォルダーとファイルの階層構造」を言葉で説明してもよいのだが、パソコンの操作画面を示すことで視覚的に説明することもできる。Windowsパソコンであれば、エクスプローラー(英語ではFile Explorer)のスクリーンショットを示せばよい。
エクスプローラーの操作画面の左には「ナビゲーションウィンドウ」が表示されるが、Cドライブの左に表示される記号をクリックすると、Cドライブ内に配置されているフォルダーの一覧が少し右にずれて表示される。そのうちのひとつ「ユーザー」フォルダーの左にある記号をクリックすると、ユーザーフォルダー内に配置されているフォルダー(つまり、ユーザーのリスト)がさらに少し右にずれて表示される。これを繰り返していくと、フォルダーとファイルの階層構造が視覚化される(階層が深まるにつれて少しずつ右にずれていく)。例えば、「ドキュメント」に保存してあるWordファイル「発表者ツールの使い方」の本当の在りかは、Cドライブの中にある「ユーザー」フォルダー内の青山専用フォルダー「Tomoyasu AOYAMA」の配下にある「ドキュメント」フォルダーであることがわかる(以下の左図)。
まったく同様に、青山がデスクトップに乱雑に保存・配置した多くのフォルダーやファイルの本当の保存場所は「C:¥Users¥Tomoyasu AOYAMA¥Desktop」である。デスクトップに保存・配置されている個々のファイルの位置、つまり、ファイルのパス(path)は「C:¥Users¥Tomoyasu AOYAMA¥Desktop¥スクショ.docx」のように表記する(¥を半角のバックスラッシュ「\」で表記することもある)。パスはフォルダーやファイルを右クリックすると簡単にコピーできる(以下の右図)。パスを正しく表記したりパスの意味を正しく理解することは、プログラマーやシステムエンジニアにとって必須の知識である。
Windows 10のサポート終了、Windows 11への移行、パソコンの買い替えについては、本学でも大きな課題となった。本学では今年度前期末に、約200台のWindows 11パソコンの調達・導入を終えた。数百台規模の買い替え・移行であっても、計画立案から導入完了まで数年がかりの大規模事業だった。予算確保、仕様検討、入札・契約、初期導入時の業務継続対応やユーザーサポート、業務データの安全かつ確実な移行...その他にもさまざまな要素を考慮に入れた学内外の交渉・折衝を数多く積み重ねる必要があった。
コンピューターや情報通信技術の専門家に限らないが、専門家ではない人を対象に説明する時に、大幅に内容を省略したり、たとえ話をしたりすることがある。そのようにしないと、説明が冗長になってしまい、結果として要点を理解してもらえないことになりかねない。相手の知的レベルや経験などにふまえて、言葉づかいやたとえ話のトピックを変えて、臨機応変に対応することになる。もちろん誠実に真摯に相手に向き合い、要点をより適確に理解してもらえるように努力する。
この逆で、誠実に真摯に相手と向き合おうとせず、要点をより適確に理解してもらう努力をいっさい放棄することもできる。説明を不適切に省略したり、的外れなたとえ話を使えばよい。相手の理解を妨げることを目的として、説明を不適切に長引かせて情報量を意図的に増やしてもよい。相手の知的レベルに合わない難解な言葉づかいを駆使したり、まったく理解できないような専門用語を多用してもよい。どうせ理解できないだろうと露骨な態度で相手に接してもよい。
この授業の受講者は、将来、政治家になることはないと思うが、営業担当者やユーザーサポート担当者になる可能性は十分にある。将来の顧客に、つまり、コミュニケーションの相手に対して誠実に真摯に向き合うための知識とスキルを身につけられるように日々精進したい。誠実さに欠けている、態度が真摯ではない、嘘をついていると相手に思われないように、ビジネスパーソンとしてのコミュニケーションスキルを身につけるための素養を磨いてほしい。
現在全国公開中の映画『俺ではない炎上』は浜松市内の各所で撮影が行われたが、本学草薙キャンパスでも撮影が行われた。テレビ番組や映画などの映像制作産業の支援は全国的に活発に行われている。浜松市では浜松フィルムコミッション(浜松市役所観光・シティプロモーション課フィルムコミッショングループ)が、本学がある静岡市では静岡市フィルムコミッション(静岡市観光政策課)が支援活動を担当している。
フィルムコミッションの活動は、単なる映像制作産業の支援ではなく、地域の観光振興の一翼も担っている。例えば、聖地巡礼・ロケ地巡りを支援するウェブサイトやパンフレットが多くのフィルムコミッションによって制作・公開されている。『俺ではない炎上』のロケ地マップは浜松市内の観光案内所でも配布されていて、誰でも気軽に入手できる。
なお、本学草薙キャンパスで撮影されたミュージック・ビデオに以下のものがある。