Microsoft Wordの校閲機能の概要を理解する。レポート作成に応用できる「校閲履歴の記録」と「コメントの追加」の基礎を習得する。
Wordの校閲機能は非常に便利な機能だから、大学生は基本的な利用方法を必ずマスターしてほしい。一方で私は、正直なところ、校閲機能をなるべく使いたくないと思っている。特に、学生を相手にレポート添削や論文作成指導をする場合だ。
学生が書いた文章を教員が加筆修正すると、その内容を学生が無批判に受け入れる可能性が高い。もし加筆修正が明らかに間違っているとしても、学生からは指摘しにくい。間違いの指摘は批判でも人格否定でも何でもないのだが、明らかに身分が上な教員に対しては勇気が必要だ。学生の立場からすれば、物事を穏便に済ませるために無用な対立を避けたいという心境になるのではないか。少なくとも私自身はそういう学生だった。
Wordの校閲機能を使うと、いっそう変な状況になるのではないかと言うのが私の正直な気持ちだ。校閲機能を使って加筆修正された文章を学生がクリックひとつですべてを承諾するとしたら、それは学生の文章ではなく教員の文章になってしまうのではないか。加筆修正はあくまでも提案なのだが、無条件降伏のように受け入れられてしまうのではないか。たとえ教員の提案だとしても、承諾ではなく却下されることもあるはずだが、却下されないのではないか。
このような大きなもやもやを抱いているのだが、この授業では初の試みとして、校閲機能を紹介してみた。私のもやもやには関係なく、ぜひ活用してもらいたい。
『伝える!作文の練習問題』(野内良三、NHK出版、2011年)を参考に、よりよい文章を書くための知識と技術を習得する。取り組んだ練習問題は以下のとおり。
あとで書きます。
以下のテレビ番組を視聴し、パブリック・スピーチとプレゼンテーションについて自由に考察する。
外国語の習得には多読が必要だと言われることがある。多読することで読解力が向上する、多読することで語彙が増える、単語の意味や文法の解釈がわからなくても気にせずに文章を読み続けることに意義がある、という具合だ。多読が本当に効果的かどうか、私個人にはわからないが、非常に多くの教材が開発・販売されているから、効果はあるのだと思う。多読を多聴に置き換えてもよい。リスニング能力を高めるには、ネイティブスピーカーによる実際の会話をたくさん聴く必要がある、テレビ・ラジオ・映画などを活用して生きた言葉のシャワーを浴び続ける必要がある、という具合だ。
このことは、よりよい文章を書くためにも、プレゼンテーションをうまく進めるためにも応用できると思う。この授業の受講生のほとんどは、日本に生まれ、日本語のネイティブスピーカーとして育ち、日本の学校教育を受けてきた。しかし、ネイティブスピーカーといえども、よい文章を書くことは難しい。レポートや期末課題はいうまでもなく、授業の感想メールを書くことも決して簡単ではない。プレゼンテーションもまったく同様だ。まず、授業で発言すること自体が難しい。発言内容がすでに思い浮かんでいても、それを実際に言葉にすることが難しい。このことを何度も何度も経験していると思う。端的に言えば、実践的な練習が足りないのだ。時には怒られ、時には褒められ、試行錯誤を何度も繰り返す、という作文・対話の実践練習が足りないのだ。もちろん、授業担当者の青山もまったく同様である。
よりよい文章を書くためには手本が必要だ。プレゼンテーションをうまく進めるためには手本が必要だ。手本はひとつだけでは不十分だ。時と場合、扱う内容、読者や聴衆の人数や知的レベル...多くのことを想定して、文章を書かなくてはならないし、プレゼンテーションを行わなければならないからだ。さまざまに異なる状況に対応するために、なるべく多くの手本を参照すべきだ。だが、たくさんのよい手本を短時間で効率よく入手することは難しい。他人から進められた手本が自分も適しているとは限らない。運が悪いと、手本にたどり着くことができないかもしれない。一方で、手本は必ず必要になるから、探し続けなければならない。効率が悪いのだが、永遠に探し続けなければならない。
何度も強調しているが、図書館に行けば本・雑誌・新聞を無料で読むことができる。自宅にテレビがあれば、それを見るのは事実上無料だ。フリーペーパー、広告、チラシ、回覧板...身の回りにはさまざまな文章があふれている。SNSを利用すれば映像が見放題だ。質が良いかどうか、実際に役に立つかどうかはあとで考え、とにかく読み、とにかく見ればよい。多読・多視聴で何かがつかめると信じて突き進むしかない。言うまでもないが、非常に効率が悪い。だが、知識やスキルを習得するためには、やるしかないのだ。
以下のテレビ番組を視聴し、パブリック・スピーチとプレゼンテーションについて自由に考察する。
本をじっくり読むことはとても重要だ。あらすじや話の展開、説明の順番や論旨展開が重要な本ならなおさらだ。時間をかけて読むと理解が進む。理解ができなくなったらいったん戻り、さらに時間をかけて読み進めていく。読むスピードや理解のスピードは人によって違うから、他人と競う必要はない。自分が心地よいと思うスピードを保てばよい。
この反対で、テキトーに読むことも重要だ。全体をざっと読んで大筋をつかみ、まずは表面的に内容を理解することも時には必要だ。あらすじや話の展開、説明の順番や論旨展開が重要ではない本はたくさんある。自分が理解できそうな章からランダムに読んで問題なければ、そうした方が効率がよい。理解できなさそうな章を後回しにできるのであれば、そうすべきだ。その章が理解できなければ次の章に永遠に進めないとしたら、全体の内容をいつまでたっても理解できなくなる。
上記のことをふまえて、「本はじっくり読まなければならない」という呪縛から自分自身を解放してほしい。
まったく同様に、「映像資料はじっくり見なければならない」という呪縛からも自分自身を解放してほしい。例えば、映画を見る場合、映画館で上映される映画ならば上映時間の約2時間を連続して確保しなければならない。途中で見るのをやめる、今日と明日に分けて見る、ということは事実上不可能だ。ところが、DVDやBD、サブスクサービスなどで映画を見る場合、時間をどのように使おうが自分自身の勝手だ。他人の都合はまったく関係ない。2時間の映画を1時間ずつ2日かけて見ても何の問題もない。夕方に前半を見て、夜寝る前に後半を見る、というのもよいだろう。早送り再生して短時間で見ても何の問題もない。内容を理解できるのであればそれでいいのだ。本を大ざっぱにテキトーに読むのと同様だ。本を休み休み読み進めて行くのと同様に、再生を途中で止めて休憩することもあるだろう。分からない単語や表現を調べながら本を読み進めて行くのと同様に、聞き逃したせりふや見逃した字幕を確認するために同じシーンを何度も繰り返すこともあるだろう。前書きや後書きを飛ばして本章を読むのと同様に、オープニングやエンディングをスキップすることも、誰にも迷惑をかけないから自由自在だ。
いうまでもないが、乱読・乱視聴は、単に「何の意図もなくカオス状態で本を読み、無秩序で支離滅裂な方針で映像資料を見る」ということを意味しない。他人から指図を受けずに自律的に工夫する、資料を読み解く自分流のやり方を試行錯誤する、ということが重要だ。どんどんトライしてほしい。
黒板でもホワイトボードでも、板書をしながらスピーチすることは難しい。そもそも板書が難しい。慣れていないと、書いた文字や図が小さ過ぎて、聴衆が読み取ることができない。おそらく、自分のためのノートテイクのような感覚で文字や図を書いてしまうからだろう。大き過ぎるのではないかと思うくらいの大きな文字や図を書くことを心がけるとよい。
黒板での板書の場合、書いた文字や図が薄過ぎて、聴衆が読み取ることができないことがある。チョークが折れるくらいの強さで文字や図を書く必要がある。そのようにすると、自然に文字や図が濃くなり、聴衆にとって読み取りやすくなる。同様に、ホワイトボードでの板書の場合、インクが薄くなってしまった廃棄寸前のホワイトボードマーカーを使うと、聴衆にとって文字や図が読み取りにくくなる。濃い文字や図を書くことができるマーカーに交換する必要がある。
上記のことを確認するために、自分の板書を教室の最後列から眺めてみるとよい。一般的に言って、小さ過ぎる文字や薄く書かれた図は読みにくい。スピーチの内容にも集中できなくなる。大きく濃く書かれた文字や図はスピーチの理解を助ける。今学期に受講している他の授業で、教員がどのように板書しているか、板書にどのような工夫をしているか、じっくり観察してほしい。
授業では、教員や他の受講生を相手に発言することになる。発言の際に、相手は自分と同等の立場にあるという想定で発言してほしい。
教員と受講生は身分も立場も責任もまったく異なる。教員は授業全体をコントロールし、受講生はいわば教員のコントロール下に置かれる。下級生と上級生を比較したら、年齢や学年が違うだけではなく、人生経験が違う。おそらく、上級生の方が1〜2年分だけ豊富な人生経験を積んでいるかもしれない。授業内容についての知識の量や深さも異なるだろう。1年次の授業で身に着けた基礎的な知識に加えて、2年次の授業でより高度な幅広い知識を身に着けているかもしれない。だが、発言の際にはそのような違いをいったん脇に置き、可能な限り対等な立場にあるという想定で発言してほしい。受講生は教員から教わる、受講生は教員から指導を受ける、下級生は上級生から助言を受ける、下級生は上級生を模範として精進する、目上の者は常に目下の者の上位にいる、身分が上の者に対して身分が下の者は服従する...という思考にとらわれないようにしてほしい。
スポーツ選手が「相手をリスペクトし過ぎないようにプレイしたい」などと発言することがある。例えば、上位チームと下位チームが対戦する場合であれば、上位チームに対して名前負けしない、成績が悪いからといって自分自身を見失う必要はない、練習の成果を目の前の相手にぶつけることに集中する、順位や成績の差に関係なく真摯にプレイする...という決意の表明だ。
授業でも同様に、教員や他の受講生をリスペクトしすぎないように心がけてほしい。必要最低限の敬意を払い、誠実な態度で適度に丁寧な言葉遣いをする、ただそれだけでよい。緊張することは避けられないとしても、萎縮してはならない。奇妙な敬語を使ったりする無用な気遣いを可能な限り排除してほしい。この逆で、相手の発言を受ける立場にある時には、誠実な態度で心を開き、相手を受け入れる姿勢を見せてほしい。
以下の新聞記事・ウェブ記事を参考に、研究倫理について自由に討論する。
この授業で剽窃レポート、コピペレポートが提出された場合、剽窃やコピペかどうかを確認するための検証を授業担当者の青山が行うことになるだろう。簡単に見破ることができる剽窃やコピペなら、検証はあっという間に終わるだろう。しかし、巧妙に剽窃・コピペされていると簡単には見破れないから、長時間の検証が必要になるだろう。ひょっとしたら数日かかるかもしれない。数日では終わらず、数週間から数ヵ月かかるかもしれない。
このようなことは教員の通常業務の一部かもしれないが、時間の無駄でもある。検証作業に時間をとられて通常業務ができなくなってしまうとすれば、残念なことだ。もし他の教員がそういう状況に直面することになるとしたら、本当に残念なことだ。
このような意味でも、研究情報の剽窃、盗用、コピペ、捏造は絶対に行わないでほしいと思っている。
協議の結果、テーマ1を採用することに決定した。
受講生から以下の4作品が紹介された。
上記のテーマ1に関連する小説、コミック、アニメ、映画...などなんでもよいので、自分が知っているものを挙げてもらった。題名が聞き取れなかったので問い返す、題名をどう表記するのかを質問する、およその内容を尋ねる、いつどこでどのように知った・見たのかを説明してもらう...ということがたびたびあった。授業中に何度も強調したが、単に問い返す、単に質問する、単に尋ねる、単に説明を求める...というだけで、それ以上の何ものでもない。日常生活でもよくあることだから、キョドったりしないでほしい。
受講生の発言を教員が聞き取れないことはよくある。年を取ってくると聴覚が衰えるからだ。小さい声でマスク越しだったらぜんぜん聞き取れない。初めて聞く言葉だったらなおさら聞き取れない。だから、「もう一度言ってください」「少し大きな声で言ってください」とお願いすることになる。このような状況で驚かないでほしい。年長者の状況を少しだけ理解してほしい。
「60を半分で割って20を足したらいくつ?」がSNSのXで話題になっていたことを知った。青山の解答は「22」だ。ひょっとしたら「50」かも、とも考えたが、やはり「22」だ。「140」と解答する人もいるそうだ。いろいろな人の解答や解説を読んで思ったのは、自分が身に着けた一般常識や算数の知識だけでなく、人としての生き方に自信がなくなってしまう、ということだ。
自分自身が関わっていることではなく、しょせん他人事に過ぎないのだが、書き言葉を操ることは難しいのだということをあらためて痛感した。自分の考えを的確に伝える、自分をうまく理解してもらうことは難しいことだ。こういうことを考える必要はまったくないのかもしれないが、ちょっと深く考え込んでしまった。
教員の発言、説明、教材、配布資料...その他なんでも、明らかな誤りや矛盾に気づいたら指摘してほしい。誤字脱字・誤変換、スペリングミス、ページ抜け、印刷の汚れや乱れ...それらに気がついた時点にその場で指摘してほしい。あとでこっそり指摘する、面と向かってじゃなくてメールで指摘する、友だちと相談してから指摘する、直接言いにくいので事務局を通じて指摘する、ハラスメントを受けそうだから指摘しない、そんなに重要じゃないから気づかないふりをする...というのを絶対にやめてほしい。受講生にとって不利益が生じるような誤りや矛盾であればなおさらだ。その場で指摘されればすぐに訂正できるから、新たな不利益が生じることがない。また、訂正情報を全員で共有できれば、誰も取り残すことなく全員が少しだけ幸せになれる。教員にとっては、自身の無能さをあらためて自覚し、事務処理能力をスキルアップさせる絶好の機会となる(ほとんどの教員は他人からダメ出しを食らうことがないので、貴重な機会だ)。
以下のトピックから3つを選択し、自己紹介シートに記載して、電子メールの添付ファイルで青山に提出すること。提出締め切りは10月10日(火)20時とする。