2020年度ベーシック・スタディIII 授業メモ
補講 2021年2月9日
インターネット時代のマスメディアの役割
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の発言を巡る報道について、記者会見のノーカット版(「THE PAGE」YouTube公式チャンネル)をぜひ見てほしい。ラジオ・テレビの「時間」「編集」「チャンネル・経路」という制約がインターネットにはほぼ存在しない。この点から、より制約のないより自由なインターネット時代のマスメディアの役割について考えてほしい。世の中の出来事や雑多な情報はどのようにして「ニュース」になるのか、報道について我々は何を期待するのか、我々の期待はどのように裏切られてきたのか、さまざまなことがらについても考察してほしい。記者会見がどのように行われているのかを知る上でも、上記の映像はとても興味深い。
上記の映像の16分30秒あたり、質疑応答で森会長は「ある特定の箇所をセンセーショナルに取り上げる一方で、発言の本来の意図や議事進行の全体の趣旨を正しく伝えないのだとすれば、それはよくないことではないのか?」とも読み取れる発言をしている。森会長が「逆ギレ」していることはほぼ間違いない。一方、文字起こしされた発言は報道機関によって微妙に異なる。わずかであっても報道内容(この場合は字面)が異なれば、読者が抱く森会長の印象も異なるのではないか。森会長を必要以上に貶めたりすることも可能ではないか。報道やニュースの限界や危険性についてもぜひ考えたい。
第15回 2021年1月28日
授業の振り返り
全15回授業を総括し、授業評価を行う。授業目標の到達度を測定する。自分自身の変化、教員や他の受講生への支援、国際関係学部生としての成長、その他の観点から授業を振り返る。
受講生から
- 情報源が増えた
- 入門書や専門書以外にも、週刊誌、テレビ番組、映画などが学びに役立つことがわかった。
- ニュース解説番組を見るようになった。
- 授業内容が他の授業でも役立った
- レポート作成について、授業での実践を自分流にアレンジしている。
- 高校までに学んできたやり方とは違う研究発表、プレゼンテーションに挑戦することができた。
- この授業を前期に履修することができたらよいと思った。
- 混乱の中で1年間を何とか乗り切った
- 1年生としての特別な経験ができず、消化不良の1年間だったという印象もある。
教員から
この授業を通じて学んだことや身につけたことを他の学生に教えてあげてほしい。学生同士の学びあい、お互いの切磋琢磨という視点で、他の学生を手助けしてあげてほしい。この授業で偶然に出会った受講生の間の交流を今後も大切にしてほしい。
第14回 2021年1月21日
メディア・コミュニケーション研究報告会 「コミュニケーション・ツールの変遷、古いメディアが新しかった時代の人間関係」
報告1 映画から見える時代の流れと人々の適応(課題映画 『雨に唄えば』)
要旨 技術革新によって社会は大きく変化する。技術革新は新しい職業を生み出す一方で、既存の職業を消滅させてしまうこともある。技術革新が引き起こす産業構造やビジネスモデルの変化にわれわれは適応し続けていかなければならない。本報告は、1920年代のアメリカ映画産業界を描いた映画『雨に唄えば』を題材として、トーキー映画という技術革新が映画産業界にもたらした影響について分析する。また、主人公ドンに焦点を当て、社会変革への適応戦略の事例研究として映画のストーリーを読み解く。
報告2 メール時代とSNS時代の光と影~コミュニケーションの本質とは~(課題映画 『ユー・ガット・メール』)
要旨 インターネットが普及し、日常生活に欠かせないものになるにつれ、電子メールやSNSを媒介としたコミュニケーションも多くの映画やテレビドラマで描かれるようになった。1998年公開の映画『ユー・ガット・メール』では、電子メールのやり取りは日常生活に利益をもたらすものとして好意的に描かれている。しかし、インターネットは地球規模の犯罪や扇動を引き起こす危険性も併せ持っていることが現在では広く知られている。本報告は、インターネット・コミュニケーションの匿名性に着目し、電子メール時代とSNS時代を中心に、インターネットの社会的受容の違いを比較検討する。
発表の振り返りと気づき
よかった点
- 必要以上に緊張せず、堂々とした態度で発表することができた。
- 離れた距離に座っている聴衆にも十分聞こえるような大きな声で発表することができた。
- 質疑応答を円滑に進めることができた。
- 映画についての独自研究や自分自身の見解を発表することができた。
- 『雨に唄えば』 技術革新に伴う社会変動への適応戦略という観点からの解釈、登場人物間の適応・不適応要因の考察
- 『ユー・ガット・メール』 成りすましや無責任な情報発信などのインターネットの匿名性の負の側面についての注目、また、それらが映画に描かれていないことの指摘
悪かった点
- 時間配分がうまくいかなかった。
- 少し早口になってしまった。報告全体のスピードが速かった。
- まとめたレジメに沿った報告を行うことができなかった。話したいことをうまく表現することができなかった。
- 補足説明や言い換えを行おうとする時、適切な表現が思いつかないことがあった。
- レジメに書かれていないことを話そうとするあまり、レジメに書かれている内容の説明がおざなりになってしまうことがあった。
- 報告の主題が適切でなかった。
- 内容を簡潔かつ的確に表すタイトル、聴講したくなるようなタイトルを付ける工夫が足りなかった。
共通の講評
独自の意見や主張をサポートするために、新聞・雑誌記事、テレビ番組、ウェブページ、映画...など、聴衆が参照できる情報を提示してほしい。例えば以下のように。
授業やゼミでの研究報告を成功に導くためには、手本となる研究報告を数多く見聞きすることが重要だ。ただし、大学の授業を受講するだけでは十分な数の研究報告を見聞きすることはできない。そこで、研究報告以外の一般的なパブリックスピーチを手本とすることを提案したい。例えば、テレビのニュース番組を通じて、情報を正確にわかりやすく伝えるアナウンサーから学ぶことができる。静岡第一テレビの徳増ないるアナウンサーは、情報をわかりやすく伝えるための重要なポイントとして「間、高低、緩急」をあげている。徳増によれば、引き立たせたい言葉の前で間を取る、強調したい言葉を高い音で発声したりゆっくり読み上げる、という工夫をニュース番組のアナウンサーは実践している。授業やゼミの場でも、研究報告に慣れていない1年生が、レジメを抑揚なく読み上げてしまったり、早口になって大幅に時間が余ってしまうということがある。毎日欠かさず放送されているテレビニュース番組を視聴すれば、より多くのパブリックスピーチに接することができる。それらを手本として、情報伝達に必要なスキルを習得し、授業やゼミでの研究報告に応用できるはずだ。
参考資料 「ないる通信 ニュース番組の裏側は」 読売新聞 2021年1月27日 朝刊24面
他の特徴的なシーン、考察のポイント
『雨に唄えば』
劇中では、1927年のアメリカ・ハリウッドの映画会社が、フランス革命時の中世ヨーロッパを舞台とする映画『闘う騎士』を制作する様子が描かれている。もし『闘う騎士』の登場人物が話す英語がアメリカ風であるならば、中世ヨーロッパでアメリカ英語が話されていることになってしまう。これは、時代考証の観点であり得ない状況である。
トーキー映画の出現は、より正確な時代考証が求められるきっかけになったと考えられる。舞台装置や衣装だけではなく、発声・発音の観点でも、劇中の描写の正確性が求められるようになったはずだ。発声教室のシーン(46分過ぎ)では、『闘う騎士』の主人公を演じる女優リーナがイギリス英語の発音・発声についての指導を受けている様子がユーモラスに描かれている。サイレント映画の時代にはまったく問われることがなかった「言葉の正確性や美しさ」が、トーキー映画では重要な意味を持つようになった。この意味で、発声教室のシーンはこの映画を読み解く上で重要なポイントだと言える。
『ユー・ガット・メール』
現在では、電子メールやSNSアプリで映像やWordファイルなどを気軽に交換することができる。一方で、電子メールの添付ファイルを媒介とした意図しない情報漏えいやコンピューターウイルスの感染が後を絶たない。SNSを経由したプライベート写真の送信強要なども大きな問題となっている。
劇中で利用されている電子メールソフトウェアは、この映画のタイアップ企業、アメリカ・オンライン(AOL)の「Instant Messanger」である。劇中のパソコン画面を確認すればわかるように、当時のInstant Messengerの主な機能は文字情報を交換することであった。当時は、文中に画像を埋め込むことはできなかった。文章以外のデータを添付ファイルとして送受信することも簡単ではなかった。この観点から見れば、我々が現在経験している前述の社会問題は、1990年代後半には存在しなかったと言ってよい。
しかし、インターネットの特徴である「匿名性」をめぐる社会問題は、当時も起こっていたはずだ。なぜならば、AOLでは「スクリーンネーム」という任意のユーザー名を利用して会員同士がコミュニケーションを行うことができたからだ。劇中で2人の主人公はお互いを「ShopGirl」「NY152」という匿名の人物として認識していた。このことは現在のSNS利用でもまったく同じで、ごくありふれた光景として見られる。この共通点を出発点として、匿名性をめぐる社会問題の特徴や変遷について、新聞・雑誌記事などを検索しても面白いだろう。
第13回 2021年1月14日
コンビニフィールドワーク報告会
日常生活に欠かせないコンビニエンスストアについて「情報」「メディア」「コミュニケーション」の観点から観察し、映像資料を提示して調査結果を報告する。
報告1 セルフレジ現金決済のユーザー体験
自宅近隣のコンビニに導入されたセルフレジを初めて利用する様子を動画で撮影した。
報告2 アルバイト経験者の視点からの観察
POSレジ、多目的コピー機、チケット販売端末、温度管理システムなどの店内設備の操作性、アルバイトに求められる機器操作スキルについて考察した。
報告3 宅配サービス利用の最新事情
新しい梱包材の開発・販売の視点から、フリマサービスと連携した新しい商品開発・サービス提供について分析した。
自由討論
- コンビニでは多くの外国人や高齢者が働いている。店内機器の多言語対応、セルフレジの導入はコンビニで働く外国人や高齢者にとって大きなメリットになっている。コンビニは地域社会や将来の問題にも繋がっている。コンビニは田舎の過疎問題や高齢化社会の影響を大きく受けるとともに、大きな影響も与える。
- コンビニには私たちの暮らしを支える最先端技術が数多く導入されている。例えば、店舗運営の省力化・無人化につながる技術はすでに身近なもので、顧客である私たちは頻繁に利用している。
- コンビニでのマイナンバーカードの活用は検討の余地がある。例えば、酒類購入時のセルフレジでの年齢認証に活用できるのではないか。また、マイナポイントと連動すれば、若者をターゲットとして、マイナンバーカードをよりいっそう普及させることができるのではないか。
- 店舗運営の省力化・無人化はデメリットをもたらす危険性がある。例えば、キャッシュレス決済が急速に進むことで、現金決済中心の高齢者が買い物弱者に追い込まれてしまう危険性がある。
- 店内機器だけでなく、商品パッケージも多言語化が進んでいる。総菜の名称が日本語と英語だけではなく、中国語や韓国語で表記されているパッケージが実際に存在する。
- コンビニは宅配サービス利用の拠点となっている。通信販売、ネットオークション、フリマサービスの普及と大きな関連性がある。商品の発送・受取時のついで買いはコンビニに大きな収益をもたらしている。
- アメリカ発祥のコンビニは日本で独自の発展を遂げている。また、日本のコンビニビジネスはアジア各国に進出し、さらに独自の発展を遂げている。コンビニビジネスは各国で現地化し、独特のコンビニ文化・空間を作り出している。
スマホを活用したプレゼンテーション
研究報告や学術プレゼンテーションでの資料提示にスマホを活用することができる。適切な接続ケーブルを準備すれば、パソコンと同様に資料を提示することができる。例えば、スマホで撮影した写真や動画をもとに研究報告を行うことは非常に簡単である。写真の拡大や動画の繰り返し再生など、日常のスマホ操作を取り入れることで、プレゼンテーションがより充実したものになる。しかも、特別なスキルや複雑な設定はいっさい不要で、失敗することがほとんどない。パソコンを活用したプレゼンテーションよりも圧倒的に簡単である。この意味でも、授業やゼミでの活動にスマホをもっと気軽に取り入れてほしい。
12月課題の締め切り 2021年1月6日
課題映画12本の中から1本を選び、1500字前後のレポートを作成しなさい。
- 内容・ストーリー紹介30%、感想・気づき・独自研究70%を目安に
- 国際関係学部の学生にふさわしい観点・着眼点で
- 楽しみながら工夫して、読み応えがあるものに
- Wordファイルを青山宛電子メールで提出すること
- 締切日時は1月6日(水)17時とする
第12回 2020年12月17日
映画で学ぶ国際関係学:アメリカの人種差別問題
受講生が推薦した以下の映画を鑑賞し、アメリカの人種差別問題について自由に討論する。
第11回 2020年12月10日
ICT社会の人間関係とソーシャルサポート
NHKひきこもりキャンペーン「#こもりびと」を参考に、ICT社会の人間関係とソーシャルサポートについて自由に討論する。
討論
以下を出発点に、自由に討論する。
- アバターを介したコミュニケーションは成立するのか
- ネット上でしか知らない人への相談は意味があるのか
- 安心して相談・交流できる環境とはどのようなものか
- 「こもりびと」の居場所はどこにあるのか
討論内容
- ネット上でしか知らない人とのコミュニケーションには抵抗がある。ネット上でしか知らない人と親密なコミュニケーションを持ったことがない。
- ネット上でしか知らない人とのコミュニケーションを行っている。例えば、オンラインゲームを通じて、ネット上でしか知らない人と頻繁に会話をしている。また、フェイス・トゥー・フェイスでは面識のない「知り合いの知り合い」「友達の友達」とSNSで交流している。SNSで会話している相手が実は近所の人だということがあり得る。
- 青山は、ネット上でしか知らない人とコミュニケーションをとることについて心理的な抵抗が少ない。パソコン通信の時代には匿名性の高いテキストベースでのコミュニケーションに、また、インターネット普及の黎明期には実名での電子メールを介したコミュニケーションに没頭した。「オフラインミーティング」「オフ会」のようなことも実際に体験したことがある。ただし現在では、オンラインで親密なコミュニケーションをとることはない(いわば、熱が冷めた)。
- オンラインでもオフラインでも、適切な相談窓口を開設・維持することが非常に難しくなっている。人材の確保も年々困難になっている。例えば、24時間体制で相談窓口を開設しようとすれば、昼夜問わず相談を受けるための機材を確保しなければ成らない。相談員を育成することは短期間ではなしえない。相談員育成には金銭的なコストもかかる。また、相談員がまったくの無償で相談活動を行うとしても、組織全体としては活動資金の確保が重要な課題となる。「いのちの電話」のような伝統的な取り組みでも、大きな課題となっている。
- 貧困、家族、DV、ハラスメント、性被害などに関連して、匿名性の高いSNSやアバターを介したコミュニケーションや相談活動は重要な意味を持つ。繁華街の巡回を通じて、支援を必要としている若者に積極的にアウトリーチする取り組みを推進している「女子高校生サポートセンター Colabo」のような団体もある。
- 近い将来、一時滞在か定住かを問わず、外国人を対象とする相談活動を推進していかなければならなくなるだろう。外国人を地域コミュニティから孤立させてしまわないような取り組みが今後ますます必要とされるだろう。さまざまな種類の困難を抱える外国人への支援を自分のこととして認識しなければならない。
第10回 2020年12月3日
12月の課題映画
テーマ:コミュニケーション・ツールの変遷、古いメディアが新しかった時代の人間関係
郵便
『チャーリング・クロス街84番地』(デビッド・ジョーンズ、1987年)
『手紙』(生野慈朗、2006年)
新聞
『オール・ザ・キングスメン』(ロバート・ロッセン、1949年)
『大統領の陰謀』(アラン・J・パクラ、1976年)
ラジオ
『グッドモーニング、ベトナム』(バリー・レヴィンソン、1987年)
『きみの声をとどけたい』(伊藤尚往、2017年)
テレビ
『クイズ・ショウ』(ロバート・レッドフォード、1994年)
『日本の黒い夏 冤罪』(熊井啓、2000年)
- 映画
- 『雨に唄えば』(ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン、1952年)
『ニューシネマ・パラダイス』(ジュゼッペ・トルナトーレ、1988年)
- インターネット
『ウォー・ゲーム』(ジョン・バダム、1983年)
- 『ユー・ガット・メール』(ノーラ・エフロン、1998年)
第9回 2020年11月26日
映像資料のデジタルアーカイブ化・カラー化
以下のテレビ番組を視聴し、歴史・民俗資料の保存と活用について考察する。
討論
- 映像フィルムの保存、映像資料のデジタルアーカイブ化は喫緊の課題である。少なくとも以下の3点を考察しておきたい。
- フィルムの経年劣化を完全に防ぐことはできない。もし適切に保存されなければ、再生・上映できないくらいに激しく劣化してしまう。修復できるとしても莫大な費用がかかる。フィルムを適切に保存・保管するための設備が必要となり、この設備を将来にわたって維持していくコストも必要となる。
- 一方、フィルムに収められた映像を見るためには、再生機・上映機材が必要となる。映画館で上映される映画がデジタル機器で撮影・編集・上映されていることからもわかるように、映像フィルムの再生機・上映機材はすでに「骨董品」になりつつある。フィルムを適切に扱う映像技術者も減っている。もしフィルムを高品質のまま保存できたとしても、映像を見ることは今後ますます困難になっていく。再生・上映のための技術や知識を後世に伝えていくこと、再生機・上映機材を新たに開発・製造すること、技術者を新たに育成すること、いずれも莫大な費用がかかる。
- コンピューター関連技術は上記2つの課題を、完全ではないが、かなりの割合と程度で克服することができる。フィルムスキャン技術で映像をデジタル化すれば、フィルムの保存・保管のための設備に必要なコストを大幅に圧縮できる。デジタルデータの複製は容易なので、複数の拠点に分散して映像を保存することが容易になる。映像の消失を防ぐことにもつながる。将来、フィルムの再生・上映が物理的に不可能になったとしても、デジタル化した映像を再生することは比較的容易であろう。ただし、将来にわたって映像データを再生し続けられるように、データを適切に保存・継承していくためのコンピューター関連技術を発展させていく必要はある。
- 映像資料のカラー化も重要な社会的課題である。少なくとも以下の2つの観点で検討したい。
- 「AIによるカラー化は完全無欠ではない」「カラー化された映像はAIからの提案に過ぎない」という視点が必要となる。番組中で紹介されたように、カラー化の精度を高めていくための研究や試行錯誤がますます重要になっていく。この研究や試行錯誤には「人間」「人の目」を介在させる必要がある。具体的には、映像に収められた出来事に直接関わった高齢者による検証、同じことがらをリアルタイムに体験した高齢者による考証が必要となる。番組中で紹介された「さつまいも」「機関車のボイラー」のエピソードは非常に重要な意味を持つ。関係者や体験者が存命であるうちに検証や考証を行わなければならないという点で、残された時間はごくわずかである。
- 一方で、研究や試行錯誤の過程に人間を介在させ、高齢者の検証を十分に受けたとしても、カラー化された映像はそれ自体はやはり「提案」に過ぎない。完全なリアリティではなく、ある種の「幻想」「ロマン」のようなものである。検証・考証を行った高齢者の「思い出補正」「思い込み」「俗信」「誤った伝承」を完全に防ぐことはできない。検証・考証された「提案」が誤った正統性を持たないように、「提案」に根拠のない権威を抱かないように、カラー化された映像をめぐる「リテラシー」「批判的考察」が必要となる。
- 『日本ニュース』のオリジナル映像はNHKによる『戦争証言アーカイブス ニュース映像』で視聴することができる。太平洋戦争開戦の大本営陸海軍部発表、学徒出陣、太平洋戦争終結の報に打ちひしがれる国民、東京裁判、日本国憲法公布、天皇行幸、その他にも報道番組で一度は見たことがあるだろう昭和史の名シーンのオリジナル映像が見られる。戦中戦後の民俗映像資料としても興味深い。戦意を高揚するような映像ばかりではなく、日常生活の風景もたびたび撮影されている。静岡県内の各地も取材されているので、ぜひ探し出してもらいたい。
参考資料
- 庭田杏珠、渡邉英徳 『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』 光文社新書 2020年
- 「文化時評 「AIひばり」 技術の未来は」 『日本経済新聞』 2020年4月19日(日曜日)朝刊19面
- 「この一冊 コンピューターは人のように話せるか? トレヴァー・コックス著」 『日本経済新聞』 2020年11月7日(土曜日)朝刊31面
第8回 2020年11月19日
パブリック・スピーチ、プレゼンテーションの評価
以下のテレビ番組を視聴し、よいスピーチ、プレゼンテーションとは何かを考察する
討論
- NHKの竹田忠解説委員と日向坂46の影山優佳、専門性やトピックはまったく異なるが、ふたりとも楽しそうにプレゼンテーションを行っている。ぜひ見習いたい。大学では、教員がつまらなさそうに授業を進めることが多い。絶対に見習わないように。
文章の推敲・校正
10月課題レポートを以下の観点から精読し、「よりよい文章」のための推敲・校正を試行錯誤する
- 長い文章を短く区切ることができるか
- 広くあいまいな意味を持つ言葉をより具体的・限定的な意味を持つ言葉に言い換えることができるか
- 言葉遣いや言い回しが文章全体のテーマや論旨に合致しているか
- 言葉遣いや言い回しが書き言葉にふさわしいか
- 読者が理解できない専門用語や馴染みのない難読漢字を多用していないか
討論
- パソコン・インターネット時代のレポート作成にはパソコン利用が必須であることは言うまでもない。ただし青山は、すべての作業をパソコンだけで行うわけではない。メモを手書きでとる、印刷した文章を手書きで修正していく、というプロセスを必ず加える。精神論・根性論の意味合いで「気合いが入る」からである。
- スマホ時代の若者は、メモや下書きの作成から清書した最終原稿の作成までのすべてのプロセスをスマホだけで行ってもよいかもしれない。ただし、思考を巡らせるための道具、試行錯誤のための道具としてはスマホは不十分だと青山は考えている。画面が狭いというのが最大の理由である。
- 第三者による校正・推敲はあくまでも提案に過ぎない。校正・推敲が不適切だと思ったら却下しても何の問題もない。特に、教員と学生、上司と部下のような上下関係のもとで校正・推敲を受ける場合に注意してもらいたい。年長者や目上の人だからといって、提案を鵜呑みにしたり、無批判に受け入れてはならない。もちろん、教員や専門家よりも学生や家族の方が適切な校正・推敲ができるかもしれない。
- 本日の授業でも実際に、青山が推敲した文章は、それ自体は間違ってはいないが、受講生の本来の意図を正確に表していない、ということが判明した。
- よりよい文章を作成するためにはボキャブラリーを増やすことが必須条件となる。コロケーションや慣用句についても少しずつ慣れ親しんでいく必要がある。もちろん、さまざまな分野や形式の文章をたくさん読むことが大前提である。学術研究とは関係ない文章もたくさん読んでほしい。
- 文章を自分自身で読み直してみる、第一読者の視点で添削してみる、という練習を積み重ねてほしい。冷静に読み直すために少し時間を置くことはとても重要である。
- とは言え、自分の文章を校正・推敲するのはとても難しく、苦痛でもある。まずは他人が書いた文章で校正・推敲の練習をしてほしい。受け取った資料を捨てる前に読んでみる、違和感のある表現を見つけ出す、言い換えができる表現を探し出す、という練習を地道に繰り返してほしい。
第7回 2020年11月12日
受講生によるはじめてのパブリック・スピーチ、プレゼンテーション
10月課題映画について、自由に討論する。
- 発展途上国に依存する一点集中型の生産方式をやめ、世界全体で生産し利益を共有する必要がある。
- 自分の衣服がどこから来たのかなどを具体的に考えられるように、消費者全員が活動家として意識を変革する必要がある。
- 世界で起きている問題を認識し、目を背けずに話し合う必要がある。
都合のいい公式情報の実態(『アトミック・カフェ』 ケヴィン・ラファティ、ジェーン・ローダー、ピアース・ラファティ 1982年)
- 冷戦下のアメリカでは、1949年のソ連による核実験の前後で、核兵器・核戦争についての見解や姿勢が大きく変化した。
- 情報操作を行う政府と情報操作に従う国民の両者が批判的に描かれている。
- 独自の映像やナレーションを挿入せず、実際の政府広報映画だけをつなぎ合わせる制作手法によって、プロパガンダの危険性が鮮明に描き出されている。
はじめてのパブリック・スピーチの振り返り、プレゼンテーションについての気づき
よかった点
- 必要以上に緊張せず、堂々とした態度で発表することができた。
- 離れた距離に座っている聴衆にも十分聞こえるような大きな声で発表することができた。
- 質疑応答を円滑に進めることができた。
- 教員からの質問にもしっかりと回答することができた。
- 映画についての独自研究や自分自身の見解を発表することができた。
- ファストファッションをめぐる社会問題をグローバリゼーションの問題、国際関係の問題として考察することができる。
- 大学の授業、サークル活動を通じて
- 新聞への投書などを通じて
- プロパガンダの影響・危険性について、冷戦時代と現代との間の比較研究ができる。
- ファクトチェックという視点から
- 情報メディアの変化・多様性の観点から
悪かった点
- 時間配分がうまくいかなかった。
- レジメのとおりに話を進めることができなかった。イントロダクションが長すぎた。
- 時間が大幅にあまった。
- 同じ話を繰り返すなどして、全体として話がくどくなり、まとまらなかった。
- 自分と他人との間で発表内容についての理解度や知識量が違うことを前提としたプレゼンテーションができなかった。
- レジメをうまくまとめることができなかった。簡素になりすぎた。
- 映画についての独自研究をもう少し盛り込んでほしかった。
- ファッションをめぐる過去の社会問題について
- 女性労働者をめぐる問題
- スポーツシューズをめぐる問題
- 労働を搾取される国の変遷
- 戦争被爆国、原子力発電所事故経験国の視点について
メモを取ること
授業やゼミ、会議や報告会など、他人の話を聞く時にメモを取らなくても完璧に理解できる人もいる。残念ながら、青山はそうではない。なので、自分の理解を助けるという意味で、メモを取るようにしている。もちろん、メモを取ったら理解が100%になるというようなことはない。
この授業では、討論や情報交換の要点を中心に、授業内容をウェブページで公開している。しかし、授業を進めることだけに集中していまい、メモを取ることをしばしば忘れてしまう。その結果、討論や情報交換の様子を記録できないという馬鹿げたことが起こってしまう。受講生から受けた質問、受講生への回答、受講生への問いかけ、受講生からの回答...このような重要な情報がこの世の中から抹殺されてしまうのだ。見過ごすことのできない由々しき事態だ。メモを取っていても記憶や理解がおぼつかないというのに、メモを取っていなかったために、授業直後にもかかわらず、討論や情報交換の様子をまったく思い出すことができなかった。
授業やゼミについて言えば、質疑応答のためにメモを取っておくべきだ。質疑応答の時間が設けられていることがあらかじめわかっているならばなおさらだ。質問という形で発表者・報告者にフィードバックを行うために、メモを取っておくべきだ。質問とそのためのメモは、あなたのためではなく、話者・発表者のためにあるのだ。大胆に言えば、授業内容や報告内容をあなたが理解するかどうかということよりも、発表や報告がよりよいものになるか、発表者や報告者がより成長するかどうかの方がより重要だ。
もちろん、何の根拠もない思いつくままのテキトーな質問をしてよいわけではない。発表内容に関連する適切な質問、報告内容にふさわしい言葉遣いを用いた質問をする必要がある。もしあなたが発表・報告を聞いている最中に思い浮かんだことを完璧に記憶できるならば、メモを取る必要はない。もしあなたが完璧な記憶の持ち主ではないのならば、メモを取っておいた方がよい。質問をメモに書いておき、質疑応答の時間にそれをそのまま読み上げてもよいくらいだ。
メモの取り方に唯一無二の方法があるわけではない。もちろん、何をメモしてもよい。メモすることがらや内容は、いちいち他人から指図を受けるようなことではないと思う。また、スマホ時代の若者として、スマホでメモを取ってもよいだろう。しかし、スマホでメモを取ると画面を凝視することになり、肝心の発表・報告に集中できなくなるのではないかと想像する。この意味で、伝統的な筆記用具でメモを取るのが無難だと思う。メモのためにノートやメモ用紙を購入するのはもったいないということであれば、学内に捨てられている授業資料やもう二度と読むことのない事務連絡の裏面を活用すればよい。
第6回 2020年11月5日
研究情報の剽窃・盗用、コピペ、捏造
以下のテレビ番組と新聞記事を参考に、研究倫理について自由に討論する。
討論
- 研究不正が社会に与える影響は大きい。不適切な研究の成果が教科書に掲載されたことで副次的な悪影響を社会にもたらされたこともある。不適切な研究の成果を引用した新しい研究が行われた場合、新しい研究の成果の正当性や価値が大きく揺らぐことになりかねない。
- 研究不正を見つけることは簡単ではない。専門家でも見抜くことができない不正が専門家によって行われているという実態がある。
- 授業レポートを作成する場合、「自分が主張したいことがすべて参考文献に書かれている」「参考文献に書かれていること以上の独自の論点を見いだすことができない」「これ以上何をしたらよいのかまったくわからなくなる」という状況に陥ることがある。それは思い違いや錯覚のようなものかもしれないし、考察や分析が単に不十分であることの結果なのかもしれないが、青山も実際に数多く経験している。
- よいアドバイスをすることができない。レポートあるあるかもしれない。少なくとも青山は同じ経験をしていて、悩みやモヤモヤで死んでしまいたいくらいの気持ちになったこともある(今もしばしば)。必要以上のプレッシャーを感じる必要はない。可能であれば、教員に相談をしてほしい。
- 言い換えると、「もっと自分に向き合ってしっかり考える必要がある」「まずは何でもいいから書いてみることが重要だ」のようなあまりにも無責任なアドバイスをしないように、教員としての青山は心がけている(もちろん十分ではないが)。青山の立場は「いっしょに悩みましょう」というものだ。
- 学術研究以外の領域でも、情報の剽窃・盗用、不適切な引用のために、書籍や雑誌が販売停止・回収処分になることがある。個人や団体への必要以上の攻撃・侮辱、名誉棄損やプライバシー侵害、マイノリティーへの差別的な言論が原因となり、雑誌記事の連載が休止されたり、雑誌そのものが廃刊となることもある。
本学図書館のOPACを利用し、蔵書検索を行う。
- 深井智朗 『ヴァイマールの聖なる政治的精神』 岩波書店 2012年
- 池内紀 『ヒトラーの時代』 中公新書 2019年
図書館利用、OPAC蔵書検索について
- インターネットを通じて簡単に蔵書検索ができる。検索結果には書架の場所も示される。貸し出し中の蔵書を利用予約することもできる。
- OPACでの蔵書検索には特別な予備知識やコツは必要ない。インターネットを利用したごく一般的な情報検索に必要な予備知識やコツを知っていればそれでよい。
- 実際に利用するとわかるが、本学のOPACでは「表現の揺らぎ」がある程度許容される。例えば、「ヒトラー」と「ヒットラー」を厳密に区別しなくても、意図どおりの検索結果を返してくれる。同様に、「ワイマール」と「ワイマル」、「ヴァイマール」と「ヴァイマル」のような表現の揺らぎも許容範囲内にある(両者の検索結果が同じになる)。一方で、「ワイマール」「ワイマル」と「ヴァイマール」「ヴァイマル」は違う検索ワードとして区別されるようである(両者の検索結果が同じにはならない)。
- 目的の書架を実際に訪れると、関連分野や周辺領域の書籍が数多く所蔵されていることがわかる。特別な目的を持たずに書架を眺めることも悪くないと思う(大学での暇つぶしとしてはこれ以上のものはない)。
- 禁帯出扱い(貸し出し・持ち出し禁止)の資料があることを理解する。例えば、辞典、年鑑、視聴覚資料が該当する。
- 学外の図書館の蔵書検索を行うことができる。相互貸借(ILL: Inter Library Loan)のシステムを通じて、学外の図書館の蔵書を利用することもできる。例えば、本学図書館を通じて、地域の図書館に所蔵されている郷土史や民俗資料の文献複写を依頼することができる。
- 他大学の図書館のOPACを利用することは何の問題もない。学部の構成や研究の専門性によって、蔵書が大きく異なることがある。本学の図書館に所蔵されていない希少価値のある専門書が他大学に所蔵されているということは十分にあり得る。必要に応じて、相互利用サービスを利用すればよい。
10月課題の締め切り 2020年11月4日
課題映画4本の中から1本を選び、800字前後のレポートを作成しなさい。
- 内容・ストーリー紹介30%、感想・気づき・独自研究70%を目安に
- 国際関係学部の学生にふさわしい観点・着眼点で
- 楽しみながら工夫して、読み応えがあるものに
- Wordファイルを青山宛電子メールで提出すること
- 締切日時は11月4日(水)17時とする
第5回 2020年10月29日
パブリック・スピーチ、プレゼンテーションの評価
NHKのニュース解説番組を視聴し、よいスピーチ、プレゼンテーションとは何かを考察する
- 『視点・論点』(Eテレ、月~水、午後1時50分~午後2時、再放送:総合、火~木、午前4時40分~午前4時50分)
- 『時論公論』(総合、月~金、午後11時30分~午後11時40分、再放送:月~金、午前4時50分~午前5時)
討論の内容
- 『視点・論点』の傾向
- 事前の説明や情報共有がないまま、唐突にプレゼンテーションが始まる。
- 話者自身のことや専門的なことについてスピーチが進められるにつれ、だんだん理解できなくなる。
- 間合いや抑揚がなく、無表情のままにスピーチが進められるので、理解が深まらない。
- 全体的な着地点が見えないままに、プレゼンテーションが進められる。
- 『時論公論』の傾向
- 冒頭に提示されるプレゼンテーション資料を通じて、要点の説明が行われる。
- 最終的な結論・まとめが提示されるので、全体として新たな情報・メッセージが得られる。
- 視覚的なプレゼンテーションによって理解が深まる。
- 画面の切り替えによって、聞き手の理解を促している。
よいパブリック・スピーチ、プレゼンテーションのために学ぶこと
- さまざまな話者によるさまざまな種類のスピーチやプレゼンテーションを見聞きしてほしい。
- よいスピーチやプレゼンテーションから、自分にもできそうなこと、真似できそうなことを見つけ出してほしい。
- 悪いスピーチやプレゼンテーションがあれば、反面教師として何かを学んでほしい。
- 大学の授業は「つまらない授業」になりがちだということを理解してほしい。もちろん、授業やゼミでの学生による発表・報告は「つまらない発表」「興味のわかない報告」になりがちであることは言うまでもない。
- 「おもしろい授業」「思わず引き込まれる発表」「興味がわく報告」を行うのがいかに難しいことかを想像してほしい。
- 2つの番組のどちらかを選ぶとしたら、『時論公論』のプレゼンテーションを手本としてほしい。
- 楽しそうにプレゼンテーションを行っている解説委員を見習ってほしい。
- 大学教員は楽しそうに授業を進める人がとても少ないので、絶対に真似してはいけない。
- プレゼンテーション資料はクオリティが高すぎるので、真似できなくともまったく問題ない。授業やゼミでのプレゼンテーション資料は、イラスト・図表を多用せず、画面切り替えやアニメーションも駆使しない、もっとシンプルなものでもまったく問題ない。
- 『視点・論点』のプレゼンテーション資料は必要十分なクオリティなので、ぜひ参考にしたい。
- TEDで行われるようなスピーチ、プレゼンテーションを真似できなくともまったく問題ない。手本としては、ごく一般的な大学生にとってはクオリティが高すぎるように思う。
- TEDには、聴衆に意識改革や行動変容をうながすようなスピーチやプレゼンテーションが多い。しばしばエンターテイメントの要素が求められるようにも思う。一方で、大学のごく一般的な授業やゼミの場ではそのようなスピーチやプレゼンテーションは必要ではないので、あえて真似する必要がない。
ディープフェイク動画について
10月22日授業終了時配布資料の出典は以下のとおり。
第4回 2020年10月22日
10月の課題映画
テーマ:受講生の現在の興味関心、受講した授業の周辺分野
テーマ:環境問題、地球温暖化、気候変動
授業に関係ない興味関心、自分が楽しいと思えること
- 映画を観ること
- 『ヘアスプレー』 ※青山も観たことがあり、DVDも所有している
- 『プラダを着た悪魔』
- 小説を読むこと
- 1920年代のアメリカ社会を理解するきっかけになった
- ディズニーの世界観について語ること
- ディズニーランド、ディズニーシー、ディズニー映画についてもよく知っている
メディア・コミュニケーション分野の自由研究報告 ネット通販のコストを負担するのは誰なのか?
- 配布資料はこちら
- 修正情報:2ページ目の上から4行目 荷物の仕分けや顧客への配達をアルバイトとして...
討論の内容
- 「置き配」とはどのような配達なのか。
- 商品を直接受け渡すのではなく、事前にしてしておいた場所に商品を置くことで受け渡しを完了したとみなす配達のこと。宅配ボックスに投函してほしい、玄関先に置いてある自転車カゴに入れてほしい、敷地内の納屋に納めてほしい、敷地内であればどこでもいいので置いてほしい、などのようにネット通販の利用者が事前に商品の置き場所を指定しておく。
- Amazonマーケットプレイスのようなに、ネット通販サイトに出店している古本・古書販売業者から本を購入する場合にも、送料無料の問題が発生するのか。
- 今回の報告では、新刊本の販売・購入をめぐる社会問題を扱った。古本・古書のネット通販は想定していなかった。
- Amazonマーケットプレイスで、1円の古本を手数料・送料350円で購入したことがあるが、新刊本のネット販売とは異なるビジネスモデルが存在しているかもしれない。購入者の側でも、いくばくかの送料を正当に支払っているという感覚が生じるように思われる。自分自身の経験としては、新刊本を送料無料で購入する時の「罪悪感」「葛藤」のようなものは感じたことはなかった。
- 質問1
- 質問2
研究報告、プレゼンテーションについて
- 失敗体験を積み重ねてほしい。
- たとえごく短時間であっても、話者になるととても緊張する。時間配分はとても難しく、話すスピードをコントロールできなくなることも多い。話し続けることで極度に疲労することもある。自分の発言が自分のものではないかような感覚に陥ってしまったり、すでにレジメに記載してある内容を読み上げることすらままならないこともある。
- 授業やゼミの時間内だけで失敗体験を積み重ねることは難しい。この点をふまえて、日々の授業で教員が行っているプレゼンテーションを観察して、イメージトレーニングを行ってほしい。この授業担当の青山の振る舞いを観察すると、プレゼンテーションが失敗する法則が発見できるかもしれない。ちなみに本日の研究報告では、報告10分+質疑応答5分=合計15分を想定していたが、基本的な時間配分を守ることすらできなかった。
- 配布資料・レジメはWordかPowerPointかどちらで作成するのか。
- 字数やレイアウトの調整はWordドキュメントの方がやりやすいように思う。写真や図表の挿入もWordドキュメントの方が簡単だと思う。
- PowerPointを活用したプレゼンテーションの場合、スライド全体を割付印刷して配布してもよい。ただし、スライドが縮小印刷されるので、文字も小さく読みにくくなる。資料の読み手にはやさしくないと思う。
- 見出しをどのように作成したらよいか。的確な表現をどうやって考え出すのか。
- 厳密なルール、絶対的な作法があるわけではない。「序論・本論・結論」「起承転結」など、まず報告内容の全体的な構成を考えるのがよいかもしれない。もちろん、自分の主張や独自の論点を見出しにもれなく反映させることが大切である。構成や見出しを考えるのを後回しにしてもよい。ひとりで試行錯誤すると道に迷うことがあるので、教員に相談することは悪くない。
- レジメには番号付きのリストと番号なしのリストがあるが、どのように区別していているのか。
- 特に厳密な区別をしなかった。番号付きのリストを使う場合、1が最重要、2がその次に重要...5が一番重要度が低い、というように、番号の順序が特別な意味をなすことがある。今回の報告ではそのような意味を持たせる意図もなかった。
- レジメ全体のレイアウトにも関連するが、いわゆる「アウトライン」の考え方をベースに、文章や項目の間の関係性や重みづけを視覚的に表現することに心がけた。ただし、Wordのアウトラインモードは利用しなかった。
出典・書誌情報について
授業で配布される資料(特に、新聞や専門書のコピー)を受け取ったら、出典や書誌情報を確認する必要がある。配布資料は何かの理由や根拠に基づいて配布されているのだが、その理由や根拠は授業内容の一部として、授業の流れの中で担当教員から説明されるだろう。このこととは別に担当教員は、配布資料が担当教員による贋作や創作物ではないということ、授業内容や担当教員の主張をサポートするために捏造したストーリーを配布資料として提示しているのではないということ、これらを確かに証明するための情報を受講生に提示しなければならない。出典・書誌情報を提示することは授業担当者として必須の作法・プロトコルのひとつだ。
配布資料には出典・書誌情報として、新聞記事のコピーであれば新聞名・掲載日・朝刊夕刊の別が、専門書であれば著者・書名・出版社・出版年が付記されているはずだ。それらは資料の余白に手書きで記載されているかもしれない。担当教員から口頭で伝えられ、資料の余白に記載しておくように指示されることもあるだろう。出典・書誌情報に基づいて情報検索をすれば、配布資料とまったく同じ情報をあなたが入手・参照することができるはずだ。出典・書誌情報が付記されていない資料を受け取ってはならないというくらいに、出典・書誌情報は重要な意味を持つ。大学での授業・ゼミに必要となる情報検索のスキルを習得する意味でも、出典・書誌情報の重要性を理解する必要がある。
出典・書誌情報を実際にどのように提示するのか、以下を参照してほしい。専門分野、学術団体によって細かい作法・ルールは異なるが、提示すべき情報はまったく同じである。
新聞の書評・読書面を見ること
大学生にとって日常生活で一番身近な情報源はインターネットであるのは間違いない。しかし、自宅で新聞を購読しているなら新聞を活用すべきだ。本学の図書館には静岡県内で購入できる新聞各紙が所蔵されている。もちろん、地域の図書館も同様だ。自宅で新聞を購読していない人は図書館で新聞を活用すればよい。紙面をめくるだけで情報を一方的・受身的に入手できることが新聞の最大の長所だ(情報を検索する必要がまったくない)。しかも、パソコンやスマホの画面を見続けるのとは異なり、印刷物はとても目にやさしいので、無用な眼精疲労に悩まされることもない。
大学生にぜひチェックしてもらいたいのは、新聞に定期掲載されている書評だ。書評は一般的に、土曜日や日曜日の紙面の中ほどに見開き2面で掲載されている。青山が定期購読している日本経済新聞には、「目利きが選ぶ3冊」が金曜日夕刊の最終面(文化面)に、書評が土曜日朝刊の読書面に掲載されている。書評ではさまざまなジャンルが扱われるので、世の中の動きやトレンドを大ざっぱにとらえるには好都合だ。しかも、著名な専門家やオピニオンリーダーが選者や筆者であることが多い。世の中の動きやトレンドについての解説や批評を書評を通じて知ることができるのも、情報収集として効率がよい。
大きな勘違いをする人がいるかもしれないが、新聞を熟読する必要はない。例えば、各紙朝刊には株式市場や外国為替市場についての情報が掲載されているが、ごく一般的な大学生がこの面を熟読しても何の情報も読み取ることができないだろう(少なくとも、青山は読み取れない)。スポーツ情報、将棋や囲碁の棋譜、連載小説についても同様に、何の関心も予備知識もないのであれば、読み飛ばしてもなんら差し支えない。むしろそれが自然だ。新聞自体は価値ある情報源だが、今は自分に関係がないと思われる情報や、今は関心が向かないと思われる箇所を無理に読む必要はない。そもそも、紙面すべてを熟読していたら、1紙だけでも半日以上かかってしまう。「新聞は熟読しなければならない」という考えは馬鹿げているので、今すぐにやめること。
繰り返しになるが、大学生だからといって森羅万象について等しく興味関心を持つ必要はないし、授業で見聞きしたすべてのことがらに積極的・能動的な態度で臨まなければならないわけではない。必要なのは、自分の身の回りのことがらへの興味関心の持ち方を少しだけ変えることだ。今すぐに新聞で書評を見ること。もちろん、書評はインターネットで見ることもできる。お気に入りの書評サイトを見つけるべく、自由に検索してみること。
第3回 2020年10月15日
テレビ番組の視聴、自由討論
以下のテレビ番組と新聞記事について、自由に討論する。
- 「CODE 103668 速報セヨ!旗振り通信」 『タイムスクープハンター アンコール』 NHKBSプレミアム 2020年10月5日放送(本放送はNHK総合で2010年4月12日)
- 坂井修一「うたごころは科学する 地球を覆う情報システム」 『日本経済新聞』 2020年7月26日(日曜日) 28面(文化面)
討論の内容
- さまざまな知識や経験があると、テレビ番組の見方が変わる。バラエティー番組から新たな気づきや発見が得られることもある。
- 現代社会ではほとんど何の意味も持たない手旗信号が、日本の経済活動を大きく動かすほどの影響力を持つ最新のテクノロジーとして利用されていた時代があった。
- 2つの番組で扱われた時代は大きく異なるが、遠くにいる人と情報を共有したい、リモートコミュニケーションを実現したいという欲望や努力は変わらない。
- 手旗信号と同様のツールとしてモールス信号があげられる。モールス信号によるコミュニケーションが映画やテレビ番組で描かれることがある。
- 18世紀末から19世紀半ばにかけてフランスで利用されていた腕木通信は、手旗信号と同じ原理の情報通信技術である。
- 手旗信号によるコミュニケーションは、我々が慣れ親しんでいる現代社会のコミュニケーションとは性質が大きく異なっている。
- 伝えられる情報量が圧倒的に少ないので、手旗信号の時代では情報の取捨選択や伝達内容の吟味が必要となっていたのではないか。
- 同じ時間で伝達できる情報量は、手旗信号の方が少ない。しかし、時間をかけて手順を増やせば、手旗信号でもより多くの情報を伝達することはできる。しかし、効率が悪く、エラーが生じる可能性も大きくなる。
- 手旗信号の時代には、符号化や通信手順を情報の送り手と受け手との間で確実に共有しておくことが難しかったのではないか。
- コミュニケーションがうまく行われた時の達成感や満足感は、手旗信号の時代の方が高かったのではないか。
- メディア・コミュニケーションの観点からの考察
- 旗振師の手配と望遠鏡の貸し出しが情報通信ビジネスとして行われ、現代社会で見られるような全国的な通信網の整備が江戸時代にも行われていたことが伺われる。
- 『タイムスクープハンター』で紹介された旗振り通信は、情報が単に一方的に送信される「伝言ゲーム」のようなシステムではなかった。通信拠点間で通信エラーを検出し、情報の再送信を可能にする高度な仕組みも備えていた。
- 約160kmの大阪・岡山間を20分以下で結ぶ、驚異的な通信速度を誇っていた。参考までに、新幹線のぞみで新大阪・岡山間は約50分、大阪府庁・岡山県庁間は徒歩で35時間、山陽自動車道経由で約2時間30分である。
- コミュニケーション行動の歴史、情報通信機器の進化、情報通信サービスの発展を分析することによって、現代社会に暮らす我々が享受している「当たり前」はどこから来たのかを理解することができる。
テレビ番組を見てみる
大学生にとって日常生活で一番身近な情報源はインターネットであるのは間違いない。しかし、自宅にテレビがあるならテレビを活用すべきだ。情報を一方的・受身的に受ければよい気楽さがあること(森羅万象について積極的・能動的である必要はない)、30分や60分というある程度まとまった時間に集中できること(たった数分では効果がなく、時間無制限では疲弊してしまう)、これら2点はテレビ視聴の長所だと思う。
NHKの受信料を支払っているなら、NHKのニュース・報道・情報・ドキュメンタリー番組を見て、ちゃんと元を取った方がよい。日本社会の大きな動きを把握するため、世界から日本に向けられている視線を理解するため、以下の番組を見ることをおすすめする。
残念ながら静岡ではすべてを視聴することができないが、テレビ東京のニュース・報道・情報番組はとても質が高い。バラエティー番組感覚で気軽に見ることができる以下の2つの番組をおすすめする。ちなみに、番組名からわかるように、日本経済新聞と提携関係にあるテレビ東京は経済報道に強みがある。ほとんどの大学生は就職活動を行うことになるが、就職活動に必要な一般常識や企業・業界研究情報を経済報道番組から入手することは効率がよい。この意味でも、依然としてテレビの重要性は変わらないと思う。
第3回目授業終了時の課題
『タモリ倶楽部』『タイムスクープハンター』を視聴して考えたこと、気づきや疑問、これまでに知っていたこと、新たに発見したこと...400~500字にまとめてメーリングリスト宛に提出しなさい。
第2回 2020年10月8日
テレビ番組の視聴、自由討論
以下のテレビ番組を視聴し、自由に討論する。
- 「サッカー×読書!本がアスリートにもたらす影響」 『FOOT×BRAIN』 BSテレビ東京 2020年9月28日放送
- アスリートとしての成長のために読書を習慣づけているプロサッカー選手がいる
- 「サッカーだけをやっていればサッカーが上手くなる訳ではない」(林彰洋)
- サッカーやスポーツに関係ない本を好んで読む選手もいる
- 「サッカー×読書」という番組のテーマを、自分の経験をふまえて、自分自身の問題として考察する
- スポーツの経験から:チームメイトとのコミュニケーションやコーチングのための「ことば」の重要性、試合中の状況判断
- 読書の経験から:何を読むのか、インプットの重要性
- 大学生としての成長の観点から:読書は成長をもたらすのか、授業に関係ない本を読む必要はあるのか
- 自分自身の言葉で自由に発言する
- 雑談を通じて授業での発言に慣れる
- 他者との共通点と相違点を見つけることがとても重要
- 自分自身のことを話しているにもかかわらず、言葉がうまく出てこなかったり的確な表現が思い浮かばないことがある
- メディア・コミュニケーションの観点からの考察
- 印刷物の書籍を紹介した選手が6名、電子書籍を紹介した選手が2名だった。「紙の本は売れない、読書が電子化している」ということは必ずしも当てはまらないのかもしれない。
書籍を手にとってみる
書店・図書館を訪れ、自分自身の興味関心にもとづいた情報収集のきっかけをつかんでほしい。古書店・古本屋も侮ることはできないので、時間の許す限り立ち寄ってほしい。フリマアプリやオークションサイトも活用する価値がある。
情報収集のやり方
効率がよいかどうかは別として、芋づる式の情報収集を行ってほしい。まずは2段階進めたら十分だろう。ウェブサイトの検索は、時間と空間がある意味で無限なので、情報収集も無限に続くことになりかねない。この点で、行き当たりばったりで無秩序なウェブサイト検索はコストの無駄遣いではないだろうか(少なくとも青山はこのようなコスパの悪い情報収集に夢中になってしまい、心身ともに疲弊してしまう)。
- ある本・ウェブページを読んだら、そこで紹介されている本・ウェブページに目を通してみる。
- ある本・ウェブページを読んだら、その著者・筆者による著書・ウェブページに目を通してみる。
第3回目授業に向けての課題
以下のテレビ番組を視聴し、考えたことを400字程度でまとめ、青山宛電子メールで提出しなさい。
第1回 2020年10月1日
教員と受講生の自己紹介
- 大学の授業を通じて関心を持ったこと
- 国際関係・政治を理解するための視点・視座
- 通史ではなく、ピンポイントに深く
- 政治家の思想や活動、史実のつながりと相互関係
- 国際協力・支援のあり方
- 危険な地域での活動の実態
- 単なる理想やあこがれを超えた実像
- 東南アジア諸国の歴史について
- 日本語教育の重要性
- 大学の授業に関係なく関心をもっていること
- ひとり旅 例えば、タイ、北海道、沖縄へ
- ワーキングホリデー
授業の目的や方針の確認
- メディア・コミュニケーションの観点から、現代社会を広く学んでいく
- 以下の2つのどちらに力点を置くか
- 主にテレビ番組や映画などの映像資料を扱う
主に書籍、新聞、雑誌などの出版物・刊行物を扱う
- プレゼンテーション、質疑応答の練習を行う
- 授業に参画・貢献する
- 教員と受講生の全員が成長できるように、お互いに働きかける