雑談 その1 香川真司の「スポーツブラジャー姿」について

 2013年7月23日(火)に日産スタジアムで開催された横浜F・マリノス対マンチェスター・ユナイテッドFCのサッカープレシーズンマッチに出場した香川真司の「スポーツブラジャー姿」が一部ネットユーザーを中心に話題になった。この試合はテレビ中継されたが、選手交代のために途中退場した香川が控えベンチで着替えをする姿が放送されたため、「男性スポーツ選手がブラジャーを身につけているという衝撃的な映像を見た」「筋肉や姿勢を整える意味があるのではないか」というようなメッセージが掲示板などで多く書き込まれた。もちろん、香川が身につけていたのはスポーツブラジャーではない。男性スポーツ選手がブラジャーをすることが流行になりつつあるということでもない。香川が女装趣味を持っているのでもない。

 一般的に、スポーツブラジャーはスポーツをする女性が利用するもので、ごく一般的なスポーツ用品店でも簡単に購入できる。有名スポーツブランドのウェブサイトを検索すれば、スポーツブラジャーは女性を対象としたものしか販売されていないことがわかる。もちろん、スポーツ用品店のウェブサイトを検索しても同様だ。実際にスポーツ用品店を訪れてみても、同様のことが容易に理解できるだろう。香川は筋肉や姿勢を整えるためにブラジャー型の矯正グッズを身につけているのではないか、という疑問についても同様に回答できる。一般的には、そのような商品は流通していない。

 では、いったい香川はなぜ「ブラジャー」をしていたのか。香川のブラジャー姿についての書き込みを入念に調査するとわかるのだが、「ブラジャー」を身につけている有名サッカー選手は香川だけではない。例えば、パリ・サンジェルマンFCのズラタン・イブラヒモビッチの「ブラジャー姿」の写真は簡単にインターネットで見ることができる(残念ながら、FCバイエルン・ミュンヘン在籍時の宇佐美貴史の姿は見ることができないようだ)。イブラヒモビッチが身につけている「ブラジャー」のブランドについて調べてみるとわかるのだが、このブランドは、心拍数や走行距離など、競技中のスポーツ選手のさまざまなデーターを収集・分析する機器・ソフトウェアを販売していることがわかる。残念ながら、香川の「ブラジャー」はこのブランドのものではないのだが、香川の「ブラジャー」も心拍数や走行距離などのデーターを収集・分析するためのグッズで、筋肉や姿勢を矯正するグッズではない、ということがおよそ想像できる。

 香川の着替え姿を見て「香川にはヘンタイ的な女装趣味がある」「男がブラジャーしてキモい」などと思った人、また、そのような短絡的な考えを広めようと躍起になっていた人、この文章を読んでいたら大いに反省してもらいたい。特に、インターネットの掲示板やまとめサイトなどの上っ面だけを読んだだけでそのような短絡的な考えに至ってしまった人は、今からでも遅くないので、考えを改めるべく、より入念に情報検索をしてもらいたい。

 以下は雑談だ。では、男性スポーツ選手が「ブラジャー型」のスポーツウェアを身につけることはあり得ないのだろうか。筆者が知る限りでは、陸上競技の長距離選手やマラソン選手は十分にあり得る。なぜならば、ウェアの素材を厳選したりワセリンや絆創膏を利用したりして、男性の長距離選手やマラソン選手が乳首からの出血を防ぐ工夫をすることはよくあることだからだ(靴擦れを防ぐ工夫と同様だ)。乳首からの出血がランナーの悩みの一つであることは、インターネットを検索すれば山ほど証拠が見つかるので、ぜひ試してみてもらいたい。ただし、現時点では、一般的な長距離選手やマラソン選手が「ブラジャー型」のウェアを身につけるまでには至っていない(そのようなウェアが存在していても一般には入手できない)ということを付け加えておく。