2023年度ベーシック・スタディIII 授業メモ

春休みの自由研究

映画視聴のアップデート

私は映画を見ることが好きだ。だから、受講生には、本を読むだけでなく何でもいいから映画を見るように強調してきた。世の中の仕組みや社会の課題について広く理解するために、映画やテレビ番組を見るように強調してきた。卒業論文を作成する際には、専門書だけでなく映画やテレビ番組を参考資料として利用するのがよいのではないかと提案してきた。もちろん適当に聞き流してもらって構わない。

私はいわゆるサブスクリプションサービスは利用したことがない。だが、そろそろ潮時で、何か契約するのも悪くないかなと思うようになってきた。誰でも知っている大手サービスを契約してもよいのだが、より良質なサービスはないものかと考えていた。エンタメ路線の映画や番組はテレビや映画館で見られるから、それ以外の分野やジャンル、ノンフィクションやドキュメンタリーに特化したサービスはないのかと考えていた。

きっかけは忘れたのだが、「アジアンドキュメンタリーズ」というサービスの存在を知った。国際関係学部に所属して、グローバルなことがらについて勉強しているのだから、このサービスはなかなかよいのではないかと思っている。これまでとは違った形で、日本に一番近い国や地域のことを知ることができるかも、と思っている。うれしいことに、500円で視聴できる映画もある。1ヵ月1000円程度で半年間または1年間の契約ができるから、それほど高額というわけでもない。卒業論文作成を視野に入れると、映像を何度も繰り返し見返すことができるから、引用がやりやすくなる。録画していないテレビ番組や映画館で一度だけしか見ない映画では、記憶に頼るほかないから、引用はほぼ不可能だ。

サブスクサービスには伝統的なテレビや映画にはない利点が確かにある。このことをふまえて、映画視聴のアップデートをじっくり検討したいと思っている。

補講 2月8日

初心は忘れてしまうし、継続もできなくなる

お恥ずかしい限りだが、新聞やニュース番組をチェックすることと英語の勉強がおろそかになっている。これが原因で、かなりバカになったと自覚している。やらない理由を探し、理由を見つけてはやらない、という繰り返しの日々だ。好きで勉強しているはずなのに、まったく継続できない。お金と時間の無駄遣いだ。コスパもタイパも悪い。日ごろ学生にはエラそうなことを言っているくせに、本当にお恥ずかしい限りだ。

たとえは悪いが、歯が痛くてひょっとしたら虫歯になってしまったのではないかと自覚したら、日ごろの歯磨きがおろそかになっているのが原因ではないか。このところ朝の目覚めが悪くて一日何かすっきりしない日が続いている場合、夜更かしが続いていることが原因ではないか。私はそんなことばかりだ。虫歯になってから一生懸命歯を磨いてもなんの意味もないし、十分な睡眠時間を確保しても過ぎ去ったすっきりしない日々を取り戻すことはできない。

日ごろの小さな行いの積み重ねや地道な繰り返し、忍耐や根性のようなものが重要なのだが、私自身はそれができないことが本当に多くなった。24時間365日ずーっとストイックになる必要はないから、日々をゆるくテキトーに生活してもなんの問題もない。だが、それが原因でやりたいことができないのだとしたら、何か変なのだ。誰も怒ってくれないし、生活をコントロールしてくれるわけでもないので、本当に大変なことが多い。自分を律することができず、私は本当に自分を恥じている。みなさんはそうならないようにしてほしい。

アントニオ猪木の言葉(新日本プロレス道場訓)、ベンジャミン・フランクリンの言葉 「今日為し得る事を明日に延ばす勿れ

有吉弘行の言葉 「やらない理由なんて無限にある。やる理由はあまりない。それでもやるんだよ。

誰か偉い人の言葉 「いいか嫌かでいったら嫌かもしれないけど、できるかできないかでいったら、できなくはないよね。」

第15回 2月1日

最終レポートの振り返り

最終レポートを題材に、レポートの書き方と推敲・校正に臨む心構えを復習する。

研究報告会の振り返り

研究報告会での口頭発表・質疑応答・討論を題材に、パブリックスピーチの課題について総合的に検討する。

授業のまとめ、振り返り

全15回の授業を総合的に評価する。この授業での経験を今後の授業やゼミに生かすために、授業全体を建設的かつ批判的に振り返る。

授業担当者からひとこと

この授業は配当年次が1・2年で、いわゆる「初年次教育」(要するに1年生向け)の授業なのだが、今年度は受講生に4年生が加わった。学年が混ざるのは大学の授業あるあるなのだが、少人数の授業で1年生と4年生が混ざることはあまりない。これはよい機会だと、第1回授業から思っていた。1年生と4年生がうまくなじめばいろいろなことが自然に発生し、学生同士が教員の意向とは無関係に学びあうようになると思っていた。言ってみれば授業は単なる場所で、早くなじんでわいわいやってくださいという気持ちで授業に臨んでいた。教員としての私の能力や授業の評価はさておき、教員が教えられることはたかがしれているし、教えられないことも多い。1年生にとってのロールモデルは教員ではなく上級生、特に4年生なのだから、教員ではなく4年生が教えるのが適切なことも多い。そういうことばかりを考えていた。

とは言っても、授業をコントロールして、それなりの内容を扱わなければならず、形もある程度整えなければならない。こういう意味で、初年次教育っぽいこともそれなりに扱いつつ、授業としては大きく外さないように心がけ、その上で、教員の意向を少しだけ押しつけ、4年生から1年生が何かを学ぶ、1年生が4年生から何かを聞き出す、そういう授業を第13・14回で実践してみた。

一期一会とかケミストリーとか、そういうものは授業でも重要だと思っている。1年生も4年生も、何か特別なことを体験できた、これまでとは違うやり方で知識を身に付けることができたのだとしたら、とてもうれしく思う。このことは授業時間でも感想メールの返信でも何度も強調しているが、ここでもあらためで強調しておきたいと思う。

第14回 1月25日

2023年度ベーシック・スタディIII 研究報告会

統一研究テーマ:科学技術がもたらす新しい生活様式、ロボットと人間の共生、機械化・自動化は社会に幸福をもたらすのか

プログラム

視線を上げてスピーチするのは難しい

日本時間の2024年1月28日(日)夜のスポーツニュースで、アメリカ大リーグ・アメリカンリーグ2023年シーズンMVPの大谷翔平(現ロサンゼルス・ドジャース)が行ったスピーチが大きな話題を集めた。大谷は全米野球記者協会ニューヨーク支部が開催した夕食会で約2分間のスピーチを行った。拍手喝采を受けたスピーチ内容とともに、大谷の英語スピーチが上達していることについても驚きをもって報道された。具体的な番組名は忘れてしまったのだが、あるスポーツニュース番組によれば、2分間のスピーチで大谷が視線を上げたのは21回だった。番組の分析によれば、過去のスピーチ(私の記憶が正しければ、5年前の最優秀新人賞受賞後のスピーチ)の時よりも2倍多かった(5年前のスピーチでは、同じく約2分間で10回だった)。5年前も今回も原稿を読み上げながらのスピーチだったが、5年前よりもより多く視線を上げられるようになり、スピーチにより余裕が感じられた、という主旨の分析だった。

このことは我々にとっても非常に参考になると思う。パブリックスピーチは非常に難しい。どんなに練習をしたとしても練習どおりに進まないことが多い。自分の自己紹介ですらうまく話せないことがある。大人数を相手にしたら緊張が高まり、早口になったり声が小さくなったりしてしまう。時間のコントロールもうまくできなくなる。原稿を見てもよい場合、原稿を読み上げることに集中してしまい、聴衆に意識を向けることがおろそかになる。パソコンのテキスト読み上げ機能のような、機械的なスピーチになりがちだ。外国語でのスピーチならなおさらだ。単なる原稿読み上げにとどまらないスピーチを聴衆は求めるのだとすれば、話者はそれに応えなければならないのではないか。少しでも応えられれば聴衆の心を動かし、聴衆の満足度も高まるのではないか。

今回の研究報告会は、事前に提出済みの最終レポートにもとづいて発表する、PowerPointスライドショーや配布資料を準備しない、ということを要件にしていた。この要件に忠実に従うためかどうかはわからないが、報告者2名は手元のパソコンに提示した原稿を読み上げるスタイルで、報告を進めた(同じスタイルで報告しようと、ふたりで事前に相談したかもしれない)。2名の報告を聞いていて、原稿を読み上げるために視線が下がり続け、ほとんど視線を上げられなかった、というように観察していた。聴衆とアイコンタクトを交わす余裕がない、聴衆のペースに合わせながら報告を進めることができていない、というように観察していた。この点において、報告者2名は現状に満足することなく、日々の生活の中で見聞きするさまざまなお手本を参考に、独自に、地道に、少しずつ自己研さんを積み重ねていってほしいと思っている。

第13回 1月18日

特別授業:就職活動と卒業論文作成の両立について

以下の要領で、卒業論文についてのインタビュー、フリートークを実施した。

第12回 1月11日

研究情報の作成、取りまとめ

レポート・論文作成のための情報通信機器・サービスの活用を検討する。すでに所有しているデバイスと無償で利用できるサービスを組み合わせて、研究情報を作成・管理する方法を模索する。iPhoneとWindowsパソコンを利用する場合は以下のとおり。

クラウドストレージサービスの厳選

iPhoneのユーザーは全員AppleIDを所有している。Windowsパソコンのユーザーは全員Microsoftアカウントを所有している。大学ではWord/Excel/PowerPointでのレポート・論文作成が求められる。これらのことをふまえると、クラウドストレージサービスはOneDriveを利用すればよいのではないか。Windowsパソコンでは標準で5GBのディスク容量が無償利用できるから、まずはこの5GBで何ができるかを試行錯誤すればよいのではないだろうか。

もちろん、無償で利用できるGoogleは有用なサービスだ。3倍15GBのディスク容量が利用できることは魅力的で、お得感がある。加えて、GmailはiPhoneでもWindowsパソコンでも気軽に利用できる。ユーザー数も多いからサポートが簡単に得られる(身近な友人知人に質問できる)。だが、ディスク容量が3分の1になる欠点をのぞけば、Microsoftアカウントでも無償メールサービスのOutlookが利用できるから、それで十分だし遜色ないのではないか。

多くの大学生は日常生活でWindowsパソコンを活用することが求められる。だから、多くのサービスを気持ちよく連携できるMicrosoftアカウントを中心に、クラウドストレージサービスを優先的に利用するのがよいのではないか。すべてのサービスがiPhoneでも利用できるから、iPhoneとAppleIDを補助的に活用すればよいのではないか。

私自身はクラウドストレージサービスをほとんど使わず、どちらかといえば嫌いだから、学生に教えるだけの十分な知識や経験があるとはいえない。一方で、私の事情とは関係なく、クラウドストレージサービスの活用はきわめて現代的で、多くの大学生にもなじむ。授業で扱う意義も価値も大きいと思う。今後の授業を適切にアップデートしなければならないと反省している。このことについては、以下を参考にした。

年末年始の自由課題

映像の世紀シリーズ」を視聴し、20世紀の人類社会と国際関係を概観する。過去のエピソードが再放送されるかもしれないので、自宅でテレビが見られる人は番組表を確認すること。必要に応じて、NHKプラスNHKオンデマンドの契約を検討すること。

第11回 12月21日

課題発見のための情報収集 その2

自分自身の興味関心をより深め、独自の研究課題を見いだすための情報収集の方法を広く検討する。学術研究の専門性や価値に関係なく、また、特定の分野や領域に限定することなく、現代社会の動向を広く理解することを試みる。ごく身近な情報源を活用して、より効率的に情報を収集する方法を模索する。

青山が紹介した雑誌、映画、テレビ番組は以下のとおり。

「国際関係学部で学んでいる」ことが勝手に視野に入ってくる

上述のとおり、授業時間中にテレビドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』を紹介した。異文化コミュニケーションや多文化共生に関心を持つ大学生にこのドラマをぜひ見てもらいたいと強く思ったからだ。主人公の荒井は、耳の聞こえない両親の間に生まれた耳の聞こえる子供「コーダ」(CODA、Children of Deaf Adults)で、ろう者を対象とする法廷通訳を担当する。荒井は、聞こえのある生活と聞こえのない生活の間の掛け橋である(そうなることが運命づけられている)。同時に荒井は、ありふれた日常生活と非日常的な裁判を結びつける役割を担っている。我々のほとんどはこのような体験をすることがない。身近な生活の中にも「ろう者の文化」という文化がある。外国語の通訳とは違う種類の通訳を必要としている人がいる。このことについての気づきを得るために、荒井の視点をぜひ理解したい。

授業での紹介時には知らなかったのだが、このドラマには原作がある。2011年に刊行され、2015年に文庫化されているから、10年以上読み継がれている。続編・スピンオフ作品も刊行されていることもまったく知らなかった。「デフ・ヴォイスシリーズ」として書評サイトやビブリオバトルでも大きく取り上げられるくらいの人気作だということも、もちろんまったく知らなかった。

紹介ページにあるように、この作品は韓国で映画化されることが決定している(もちろん、まったく知らなかった)。韓国でもまったく同様に、聴者の文化とろう者の文化の問題やマイノリティとしてのCODAへの社会的な関心が高まっているのだと想像する。運が良ければ2〜3年後、映画を見た韓国人の若者と交流することができる。政治経済や歴史の領域以外で、日韓両国の若者が同じ関心事や社会問題を共有できるとしたら、本当にすばらしいことだ。K-POPや韓流ドラマを通じて韓国文化に慣れ親しんでいる若者にはよく知られていることなのかもしれないが、まったく思いつきのドラマ視聴が思わぬ形で国際関係学的な気づきにつながった。まったく想定していなかった。率直に言って、非常に驚いた。

第10回 12月14日

課題発見のための情報収集

自分自身の興味関心をより深め、独自の研究課題を見いだすための情報収集の方法を広く検討する。多種多様な研究・専門分野に触れることで、現代社会の動向を広く理解することを試みる。ごく身近な情報源を活用して、より効率的に情報を収集する方法を模索する。

身近な情報通信機器を活用した勉強方法

iPhoneで無償利用できるプレインストール機能「辞書」「翻訳」を事例に、インターネット時代の勉強方法を模索する。

すでにそこにある情報源を利用する

日々の生活のあらゆる側面でコスパやタイパ・タムパを重視する時代だから、課題発見のための情報収集ついてもコスパやタイパ・タムパを重視してほしい。少なくとも、コスパは考えたほうがよい。もし自宅で新聞を購読しているならば、少しだけでも読んだほうがよい。自宅でテレビが見られるのであれば、ニュースや教養情報番組を見たほうがよい。NHKの受信料を支払っているならばなおさらで、最低限度の元を取るべく、NHKスペシャルETV特集を見たほうがよい。NHKの調査報道番組は非常に質が高い、見て損はないと、私自身は思っている。

既存のマスメディアが発信する情報は信用ならない、時代遅れで役立たずの「マスゴミ」には何の価値もない、そもそも新聞やテレビは面白くない、ネットで得られる情報で十分だ...そのように考えること自体は自由だから、何の問題もない。そういう人に対して新聞購読を新規契約すべきだと言うつもりはない。見たくもないテレビを新たに購入することも強要しない。お金の無駄遣いをする必要はまったくない。

ちゃんと考えたほうがよいのは、情報収集のための有償のサービスやツールを使うことができる環境がすでに整っているのであれば、その環境を有効活用すべきではないか、ということだ。身近なサービスやツールをまったく利用せずに、お金を捨てているような状況なのであれば、コスパが悪いと言わざるを得ない。今すでにそこにある情報源を使うのだから、非常にコスパが高い。情報源を探す手間も省けるから、タイパ・タムパも高い。

このことは、自分自身への戒めとしても強調しておきたいと思う。もちろんのことだが、それぞれの家庭にそれぞれの考え方や事情があるから、私がとやかく言うことではない。

第9回 12月7日

よりよい文章を書くための実践、校正・推敲の練習(その2)

Microsoft Wordの校閲機能の概要を理解する。レポート作成に応用できる「校閲履歴の記録」と「コメントの追加」の基礎を習得する。

Wordの校閲機能についてのもやもや

Wordの校閲機能は非常に便利な機能だから、大学生は基本的な利用方法を必ずマスターしてほしい。一方で私は、正直なところ、校閲機能をなるべく使いたくないと思っている。特に、学生を相手にレポート添削や論文作成指導をする場合だ。

学生が書いた文章を教員が加筆修正すると、その内容を学生が無批判に受け入れる可能性が高い。もし加筆修正が明らかに間違っているとしても、学生からは指摘しにくい。間違いの指摘は批判でも人格否定でも何でもないのだが、明らかに身分が上な教員に対しては勇気が必要だ。学生の立場からすれば、物事を穏便に済ませるために無用な対立を避けたいという心境になるのではないか。少なくとも私自身はそういう学生だった。

Wordの校閲機能を使うと、いっそう変な状況になるのではないかと言うのが私の正直な気持ちだ。校閲機能を使って加筆修正された文章を学生がクリックひとつですべてを承諾するとしたら、それは学生の文章ではなく教員の文章になってしまうのではないか。加筆修正はあくまでも提案なのだが、無条件降伏のように受け入れられてしまうのではないか。たとえ教員の提案だとしても、承諾ではなく却下されることもあるはずだが、却下されないのではないか。

このような大きなもやもやを抱いているのだが、この授業では初の試みとして、校閲機能を紹介してみた。私のもやもやには関係なく、ぜひ活用してもらいたい。

第8回 11月28日(火)

よりよい文章を書くための実践、校正・推敲の練習

伝える!作文の練習問題』(野内良三、NHK出版、2011年)を参考に、よりよい文章を書くための知識と技術を習得する。取り組んだ練習問題は以下のとおり。

参考図書

文章を書くのは難しい

自分自身の経験からいって、文章を書くのは難しい。よい文章を書くことはもっと難しい。わかりやすく書いたつもりでも、何が言いたいのかよくわからないと言われることばかりだ。この逆で、例えば日常の業務に関連するメールを受け取ると、要点が伝わってこないので全文を読む気がしなくなることがある。メールの送信者も腐心して文章を書いたはずだが、受信者としてはちょっと勘弁してほしいと思うことは(残念ながら)実際にある。

私自身が心がけていることは、何はなくとも「文章は短く書く」ことである。これは非常に難しい課題だ。難しい課題だからこそ、取り組み甲斐がある。もちろん練習が必要で、独自の試行錯誤が必要だ。練習してもすぐに上達するわけではないし、上達するかどうかもわからない。試行錯誤の成果もよくわからないし、結局は他人の評価に依存するので、悪い評価を受けることが多くなる。それでも、辛抱強く地道に取り組まなければならないと思っている。

よい文章を書くためにできる限り文章を短く書くという課題は、ある種の永遠の課題なのだと思う。だから、非常に多くの参考書が強調して取り上げている。今回の授業で参照した3冊の参考書がまさにそうだ。野内によれば「長文は悪文の元凶」だ(作文の心得26、pp142-144)。小笠原によれば、文章のわかりやすさをつくる唯一の原則は「一文を短くする」ことだ(p.205)。戸山田によれば、長い文章を操ることは難しいので、なるべく短い文章に区切ることが無難である(鉄則32、pp.240-242)。3冊とも本学図書館に所蔵されているから、いつでも参照できる。絶対に忘れないでいてほしい。

第7回 11月16日

パブリックスピーチ、プレゼンテーションの評価 その2

以下のテレビ番組を視聴し、パブリック・スピーチとプレゼンテーションについて自由に考察する。

討論のメモ

多読、多視聴はとても重要

外国語の習得には多読が必要だと言われることがある。多読することで読解力が向上する、多読することで語彙が増える、単語の意味や文法の解釈がわからなくても気にせずに文章を読み続けることに意義がある、という具合だ。多読が本当に効果的かどうか、私個人にはわからないが、非常に多くの教材が開発・販売されているから、効果はあるのだと思う。多読を多聴に置き換えてもよい。リスニング能力を高めるには、ネイティブスピーカーによる実際の会話をたくさん聴く必要がある、テレビ・ラジオ・映画などを活用して生きた言葉のシャワーを浴び続ける必要がある、という具合だ。

このことは、よりよい文章を書くためにも、プレゼンテーションをうまく進めるためにも応用できると思う。この授業の受講生のほとんどは、日本に生まれ、日本語のネイティブスピーカーとして育ち、日本の学校教育を受けてきた。しかし、ネイティブスピーカーといえども、よい文章を書くことは難しい。レポートや期末課題はいうまでもなく、授業の感想メールを書くことも決して簡単ではない。プレゼンテーションもまったく同様だ。まず、授業で発言すること自体が難しい。発言内容がすでに思い浮かんでいても、それを実際に言葉にすることが難しい。このことを何度も何度も経験していると思う。端的に言えば、実践的な練習が足りないのだ。時には怒られ、時には褒められ、試行錯誤を何度も繰り返す、という作文・対話の実践練習が足りないのだ。もちろん、授業担当者の青山もまったく同様である。

よりよい文章を書くためには手本が必要だ。プレゼンテーションをうまく進めるためには手本が必要だ。手本はひとつだけでは不十分だ。時と場合、扱う内容、読者や聴衆の人数や知的レベル...多くのことを想定して、文章を書かなくてはならないし、プレゼンテーションを行わなければならないからだ。さまざまに異なる状況に対応するために、なるべく多くの手本を参照すべきだ。だが、たくさんのよい手本を短時間で効率よく入手することは難しい。他人から進められた手本が自分も適しているとは限らない。運が悪いと、手本にたどり着くことができないかもしれない。一方で、手本は必ず必要になるから、探し続けなければならない。効率が悪いのだが、永遠に探し続けなければならない。

何度も強調しているが、図書館に行けば本・雑誌・新聞を無料で読むことができる。自宅にテレビがあれば、それを見るのは事実上無料だ。フリーペーパー、広告、チラシ、回覧板...身の回りにはさまざまな文章があふれている。SNSを利用すれば映像が見放題だ。質が良いかどうか、実際に役に立つかどうかはあとで考え、とにかく読み、とにかく見ればよい。多読・多視聴で何かがつかめると信じて突き進むしかない。言うまでもないが、非常に効率が悪い。だが、知識やスキルを習得するためには、やるしかないのだ。

第6回 11月9日

パブリックスピーチ、プレゼンテーションの評価

以下のテレビ番組を視聴し、パブリック・スピーチとプレゼンテーションについて自由に考察する。

討論のメモ

乱読、乱視聴はとても重要

本をじっくり読むことはとても重要だ。あらすじや話の展開、説明の順番や論旨展開が重要な本ならなおさらだ。時間をかけて読むと理解が進む。理解ができなくなったらいったん戻り、さらに時間をかけて読み進めていく。読むスピードや理解のスピードは人によって違うから、他人と競う必要はない。自分が心地よいと思うスピードを保てばよい。

この反対で、テキトーに読むことも重要だ。全体をざっと読んで大筋をつかみ、まずは表面的に内容を理解することも時には必要だ。あらすじや話の展開、説明の順番や論旨展開が重要ではない本はたくさんある。自分が理解できそうな章からランダムに読んで問題なければ、そうした方が効率がよい。理解できなさそうな章を後回しにできるのであれば、そうすべきだ。その章が理解できなければ次の章に永遠に進めないとしたら、全体の内容をいつまでたっても理解できなくなる。

上記のことをふまえて、「本はじっくり読まなければならない」という呪縛から自分自身を解放してほしい。

まったく同様に、「映像資料はじっくり見なければならない」という呪縛からも自分自身を解放してほしい。例えば、映画を見る場合、映画館で上映される映画ならば上映時間の約2時間を連続して確保しなければならない。途中で見るのをやめる、今日と明日に分けて見る、ということは事実上不可能だ。ところが、DVDやBD、サブスクサービスなどで映画を見る場合、時間をどのように使おうが自分自身の勝手だ。他人の都合はまったく関係ない。2時間の映画を1時間ずつ2日かけて見ても何の問題もない。夕方に前半を見て、夜寝る前に後半を見る、というのもよいだろう。早送り再生して短時間で見ても何の問題もない。内容を理解できるのであればそれでいいのだ。本を大ざっぱにテキトーに読むのと同様だ。本を休み休み読み進めて行くのと同様に、再生を途中で止めて休憩することもあるだろう。分からない単語や表現を調べながら本を読み進めて行くのと同様に、聞き逃したせりふや見逃した字幕を確認するために同じシーンを何度も繰り返すこともあるだろう。前書きや後書きを飛ばして本章を読むのと同様に、オープニングやエンディングをスキップすることも、誰にも迷惑をかけないから自由自在だ。

いうまでもないが、乱読・乱視聴は、単に「何の意図もなくカオス状態で本を読み、無秩序で支離滅裂な方針で映像資料を見る」ということを意味しない。他人から指図を受けずに自律的に工夫する、資料を読み解く自分流のやり方を試行錯誤する、ということが重要だ。どんどんトライしてほしい。

第5回 11月2日

板書しながらのスピーチ、発言は難しい

黒板でもホワイトボードでも、板書をしながらスピーチすることは難しい。そもそも板書が難しい。慣れていないと、書いた文字や図が小さ過ぎて、聴衆が読み取ることができない。おそらく、自分のためのノートテイクのような感覚で文字や図を書いてしまうからだろう。大き過ぎるのではないかと思うくらいの大きな文字や図を書くことを心がけるとよい。

黒板での板書の場合、書いた文字や図が薄過ぎて、聴衆が読み取ることができないことがある。チョークが折れるくらいの強さで文字や図を書く必要がある。そのようにすると、自然に文字や図が濃くなり、聴衆にとって読み取りやすくなる。同様に、ホワイトボードでの板書の場合、インクが薄くなってしまった廃棄寸前のホワイトボードマーカーを使うと、聴衆にとって文字や図が読み取りにくくなる。濃い文字や図を書くことができるマーカーに交換する必要がある。

上記のことを確認するために、自分の板書を教室の最後列から眺めてみるとよい。一般的に言って、小さ過ぎる文字や薄く書かれた図は読みにくい。スピーチの内容にも集中できなくなる。大きく濃く書かれた文字や図はスピーチの理解を助ける。今学期に受講している他の授業で、教員がどのように板書しているか、板書にどのような工夫をしているか、じっくり観察してほしい。

対等な立場で発言し、ディスカッションする

授業では、教員や他の受講生を相手に発言することになる。発言の際に、相手は自分と同等の立場にあるという想定で発言してほしい。

教員と受講生は身分も立場も責任もまったく異なる。教員は授業全体をコントロールし、受講生はいわば教員のコントロール下に置かれる。下級生と上級生を比較したら、年齢や学年が違うだけではなく、人生経験が違う。おそらく、上級生の方が1〜2年分だけ豊富な人生経験を積んでいるかもしれない。授業内容についての知識の量や深さも異なるだろう。1年次の授業で身に着けた基礎的な知識に加えて、2年次の授業でより高度な幅広い知識を身に着けているかもしれない。だが、発言の際にはそのような違いをいったん脇に置き、可能な限り対等な立場にあるという想定で発言してほしい。受講生は教員から教わる、受講生は教員から指導を受ける、下級生は上級生から助言を受ける、下級生は上級生を模範として精進する、目上の者は常に目下の者の上位にいる、身分が上の者に対して身分が下の者は服従する...という思考にとらわれないようにしてほしい。

スポーツ選手が「相手をリスペクトし過ぎないようにプレイしたい」などと発言することがある。例えば、上位チームと下位チームが対戦する場合であれば、上位チームに対して名前負けしない、成績が悪いからといって自分自身を見失う必要はない、練習の成果を目の前の相手にぶつけることに集中する、順位や成績の差に関係なく真摯にプレイする...という決意の表明だ。

授業でも同様に、教員や他の受講生をリスペクトしすぎないように心がけてほしい。必要最低限の敬意を払い、誠実な態度で適度に丁寧な言葉遣いをする、ただそれだけでよい。緊張することは避けられないとしても、萎縮してはならない。奇妙な敬語を使ったりする無用な気遣いを可能な限り排除してほしい。この逆で、相手の発言を受ける立場にある時には、誠実な態度で心を開き、相手を受け入れる姿勢を見せてほしい。

第4回 10月26日

研究情報の剽窃、盗用、コピペ、捏造

以下の新聞記事・ウェブ記事を参考に、研究倫理について自由に討論する。

討論のメモ

研究情報の剽窃、盗用、コピペ、捏造を行わないこと

この授業で剽窃レポート、コピペレポートが提出された場合、剽窃やコピペかどうかを確認するための検証を授業担当者の青山が行うことになるだろう。簡単に見破ることができる剽窃やコピペなら、検証はあっという間に終わるだろう。しかし、巧妙に剽窃・コピペされていると簡単には見破れないから、長時間の検証が必要になるだろう。ひょっとしたら数日かかるかもしれない。数日では終わらず、数週間から数ヵ月かかるかもしれない。

このようなことは教員の通常業務の一部かもしれないが、時間の無駄でもある。検証作業に時間をとられて通常業務ができなくなってしまうとすれば、残念なことだ。もし他の教員がそういう状況に直面することになるとしたら、本当に残念なことだ。

このような意味でも、研究情報の剽窃、盗用、コピペ、捏造は絶対に行わないでほしいと思っている。

第3回 10月19日

統一テーマの決定

協議の結果、テーマ1を採用することに決定した。

  1. 科学技術がもたらす新しい生活様式、ロボットと人間の共生、機械化・自動化は社会に幸福をもたらすのか
  2. 戦争と情報通信、郵便・電話ビジネスの変遷、戦時下の公務員の職責

関連する映画、アニメ、コミックなど

受講生から以下の4作品が紹介された。

授業あるあるについて(特に、中年教員担当の授業あるあるについて)

上記のテーマ1に関連する小説、コミック、アニメ、映画...などなんでもよいので、自分が知っているものを挙げてもらった。題名が聞き取れなかったので問い返す、題名をどう表記するのかを質問する、およその内容を尋ねる、いつどこでどのように知った・見たのかを説明してもらう...ということがたびたびあった。授業中に何度も強調したが、単に問い返す、単に質問する、単に尋ねる、単に説明を求める...というだけで、それ以上の何ものでもない。日常生活でもよくあることだから、キョドったりしないでほしい。

受講生の発言を教員が聞き取れないことはよくある。年を取ってくると聴覚が衰えるからだ。小さい声でマスク越しだったらぜんぜん聞き取れない。初めて聞く言葉だったらなおさら聞き取れない。だから、「もう一度言ってください」「少し大きな声で言ってください」とお願いすることになる。このような状況で驚かないでほしい。年長者の状況を少しだけ理解してほしい。

第2回 10月12日

図書館の利用

書誌情報、奥付

書き言葉を操るのはかなり難しい

「60を半分で割って20を足したらいくつ?」がSNSのXで話題になっていたことを知った。青山の解答は「22」だ。ひょっとしたら「50」かも、とも考えたが、やはり「22」だ。「140」と解答する人もいるそうだ。いろいろな人の解答や解説を読んで思ったのは、自分が身に着けた一般常識や算数の知識だけでなく、人としての生き方に自信がなくなってしまう、ということだ。

自分自身が関わっていることではなく、しょせん他人事に過ぎないのだが、書き言葉を操ることは難しいのだということをあらためて痛感した。自分の考えを的確に伝える、自分をうまく理解してもらうことは難しいことだ。こういうことを考える必要はまったくないのかもしれないが、ちょっと深く考え込んでしまった。

第1回 10月5日

授業の目的や方針の確認

メディア・コミュニケーションの観点から、現代社会を広く学んでいく

プレゼンテーション、質疑応答の練習を行う

授業に参画・貢献する

授業のルール

教員の誤りを適切に指摘する

教員の発言、説明、教材、配布資料...その他なんでも、明らかな誤りや矛盾に気づいたら指摘してほしい。誤字脱字・誤変換、スペリングミス、ページ抜け、印刷の汚れや乱れ...それらに気がついた時点にその場で指摘してほしい。あとでこっそり指摘する、面と向かってじゃなくてメールで指摘する、友だちと相談してから指摘する、直接言いにくいので事務局を通じて指摘する、ハラスメントを受けそうだから指摘しない、そんなに重要じゃないから気づかないふりをする...というのを絶対にやめてほしい。受講生にとって不利益が生じるような誤りや矛盾であればなおさらだ。その場で指摘されればすぐに訂正できるから、新たな不利益が生じることがない。また、訂正情報を全員で共有できれば、誰も取り残すことなく全員が少しだけ幸せになれる。教員にとっては、自身の無能さをあらためて自覚し、事務処理能力をスキルアップさせる絶好の機会となる(ほとんどの教員は他人からダメ出しを食らうことがないので、貴重な機会だ)。

授業終了時の課題

以下のトピックから3つを選択し、自己紹介シートに記載して、電子メールの添付ファイルで青山に提出すること。提出締め切りは10月10日(火)20時とする。

  1. 中学・高校時代に取り組んでいたこと。大学入学以前に熱中していたこと。
  2. これまでの授業を通じて関心を持ったこと。来年度の1年生にお薦めしたい授業。
  3. 国際関係学部の志望理由。これから専門的に学んでみたいこと。
  4. 授業とは関係なく自分自身で取り組んでいること。趣味やこだわり。大学在学中にやってみたいこと。
  5. 英語の勉強について感じていること。英語運用能力の自己評価。